【完】One Knight / KnightA + Y (ページ17)

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　裏ではしてるのかな。
　少し気になってしまったけれど、その質問は一度引っ込める。

　ごくん、と久しぶりに飲んだカシスオレンジはもう氷が熔けて少しアルコールが飛んでいた。あんまり美味しくは無い。でも、気分が舞い上がっているため、誤魔化すように身体へ流し込む。

「……ねぇ、ごめんね。こんなこと聞くなって思っちゃうかもしれないんだけど、」
「？」
「しゆに抱きしめられてたの、本当に会話の流れ……？」

　ぎゅっと丸っこい爪を隠すように、手をグーに握りしめるカレ。今にも泣き出してしまいそうな声に慌てて「ちがう」と言おうとすれば、パチリと目が合う。

　紫色の綺麗な瞳。ずっと見つめていたら吸い込まれてしまいそうなほど綺麗なその瞳に魅入ってしまう自分がいた。

「……僕が一番初めに君と会ったのに、妬いちゃうっ！ ……争いなんてしないって言ったけど、でも。……君を取られちゃうのは、やだ」
「っ！？」
「上書き、してもいいかな？ぎゅーって、君のこと抱きしめたい。……だめ？」

　急に来たこの距離感。絶対に安心などこと場所にはなかったんだと分からせられる。そして自分のルックスを絶対に分かっているカレは、こてん、と首を横に傾げて上目遣いでコチラを見てくるのだ。こんなの似合うの美少女くらいだと思ってたけど、美青年も似合うんだね。初知り。

　心の中なんてどうとでも余裕に見えるが実際は瞬きをするので精一杯、息継ぎなんて二の次だ。

「ま、ひとく……」
「しゆはいいのに。僕はだめなの？そんなの無理ぃ。耐えられないっ！」

　しゆんさんがいいとか。まひとくんがダメとかでは無い。どっちもダメなの。心臓がもたなくなっちゃうから、やめて欲しい。でも、目の前で仔犬みたいなきゅるんきゅるんの瞳で見つめられると断ることもできないのだ。なんて罪深い男の子なんだろう。

「おねがい。……いいよって、言ってよ。その可愛い口で」
「っ、まって、ちかいよ、まひとくんっ、」
「……『いいよ』はぁ？」

　可愛いだなんて思ってみていた仔犬系男子の蓋を開けてみれば、強引な狂犬くんだった。みたいなそんな感じ。どこでスイッチが入ったのか分からないが急に入ったドSがドキドキ私の胸を高鳴らせる。

「う、ん。……いいよ」
「あははははっ！ありがとー！じゃあ、いっぱいぎゅーってしちゃうね？」