【完】One Knight / KnightA + Y (ページ16)

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騎士ページ16

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「お隣、座っちゃうね？」
「うん」
「……お店、楽しめてる……？あ、お酒とか！あんまり減ってないね、もしかして弱かった？」
「あ、いえ……。皆さんと話してたら飲むタイミングなくなっちゃって」

　さっき会ったばかりなのにカレにだけはもう絶対的な安心感と信頼が出来ている。この知らない人たちがいる中でも落ち着ける事ができるのに少し感動。

「そっかー。まあ、皆初めてのお姫様みると興味深々なんだよねー」

　動物か……？いや、人間も動物の一種なんだけど、『興味深々』って、そんな幼児みたいな感じで私の事見てたの……？？
　想像するとちょっと笑えちゃう。

　くすくすと笑っていれば、水色のカラースーツを着たカレは安堵したような優しい笑顔を見せる。どこまでも爽やかで暖かい人だ。

「皆さん、意外と仲良いんですね」
「え？」
「あ、なんていうか……、ホストっていうからすごいナンバー争いとかあるのかなーって、ちょっと思ってたりしてて」
「あー。うん、確かにあるよ！そりゃあもう毎月ピリピリしちゃう時だってあるんだけど！ ……でも、僕ら皆、来てくれたお姫様を守れる『一人の騎士』になれますようにって思ってるから、協力する事だってあるんだよ」

　にっこり。その笑顔をみてようやくこの店の名前の由来を理解する。どの名刺にもあった『One Knight』という文字。安直に日本語訳すると『一人の騎士』を意味するのだが、なんでこれがここに？なんて不思議に思っていた。

　来てくれたお姫様を守れる。か……。確かに今日、ここに来てから守られている気がする。具体的な何かが大きく変わったわけではないが、一人でぐるぐる考えているよりかは誰かと一緒に居る事で状況を冷静に分析することも出来た。それに、本当に一人のお姫様みたいに扱ってくれたここが少し好きにもなったのだ。

　ホストなんて、金とる詐欺師みたいなものだと思ってたけど、全然そんなんじゃなかった。

「辛いこととか。抜け出したいこととか。多分ここに来る子は沢山悩んでたりしてて、それを全部忘れられるように、癒しの時間をプレゼントするのが僕らの仕事だからねっ！お客様の前では露骨にナンバー争いはしないよー」