キミが×んだ世界【歌い手】

切望 ページ30

そらるside



Aが赤いプレートの部屋に入るのを見送り、ゆっくりと自分の部屋へと足を運ぶ


考え事をしていて今のAの部屋を通り過ぎるなんて迂闊だった

いや…うっかり口が滑ってしまったのが悪かった

なにをやっているのか……

嗤ってしまう



あそこは元々坂田が使っていた部屋だ

今はもう空き部屋で物も備え付けのものしかないけど…


物を残していったのは天月だけ

といっても実際に見たわけではないからなんとも言えないが…

わざわざ鍵をかけてここを去ったのはあいつだけだ

そして今もなお、あのことを受け止めきれずにいるのも…あいつだけだ…


ポケットからカードキーを取り出し、青いプレートの部屋へと入る

部屋の中にあるのは他の部屋と変わらない

机と椅子と箪笥とベッドが置いてあるだけ

違うことと言えば、机の上に切り取られた紙が数枚置いてあることだ


捨てるに捨てられずずっと置きっぱなし

少ししわくちゃで、ところどころに血痕が付いているノートの切れ端

いつか返す時がくるのだろうか…


そもそも俺のしたことは間違えてないか

相談しようにも皆には言えない

まふまふにだって……


終わらせるべきなんだ。

それはうらたくんたちと同意見だ

そこにAが不可欠なのも納得する。

そして、俺たちが無力なのも……


ただ、俺と彼らとは認識に違いがあるんだ

“アイ”…すべてのAIを統べる人工知能

Aが作り上げた一番最初のAIだ

“アイ”が機能を停止すれば紐づけされている他のAIも停止する

街にいるロボットも人として生活してるAIも全部…

どうにかしてそれは避けたいんだ…



　






ーーーお前らの死んだ世界なんて







俺の望んだ世界じゃないからーーーー

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