本、返してください。【名前変換オリジナル】

第６節 ページ20

やがて、各々が帰る時間となり、一人一人、遠い順に家の近くまで送る。

　最後に、藤野が残った。

　「ねぇ、浩介」

横に並んで歩きながら、やけに真面目な口調で藤野が言う。

「半年前、義母と義姉ができたとき、自分のことをシンデレラに例えたの、覚えてる？」

「ん？ああ、うん」

そういえば、そんなこともあった気がする。ってか、いきなり何を言い出すんだ。

「その時さ、私が、状況を打破できる王子様(あの子)と恋人になるための、魔法使いになってやるって言ったのは？」

「覚えてるけど。さっさとハッキリ言えよ。何が言いてぇんだよ」

　「私はっ……！」

藤野がこっちを見た。顔を真っ赤に染めて。

「私がなりたかったのは、本当は魔法使いじゃなくて……」

「おい！」

無理矢理に言葉を遮る。

　この先は聞いてはいけない。理由は分からないけど、本能的に、そう思った。

　「藤野、家、この辺だろ？」

「え？あ、うん」

「じゃあな。今日はありがとう」

藤野を置いて、家へ走る。

　なんだったんだ、あれは……？

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