検索窓
今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:39,156 hit

8 苛立ちの結果〈リヴァイside〉 ページ8

あゆなに突き飛ばされて瞬時に我に返った。


俺は今、何をした…?

キスを…したのか…?

コイツの了承も得ないで…

それも…強引に…


「良く知らない男性(ひと)」と言われて、一気に頭に血が上った。

こういう時、俺は途端に制御が利かなくなる。

目に見えない力が身体の奥から湧き上がり、全身に行き渡っていった。

ただ、女に対してこうなったのは初めてで、さすがに俺も放心状態だった。


どんな修羅場を迎えようとも、いつだって冷静に対応してきたじゃねぇか。

何故それがコイツ相手だと出来ねぇんだ…ッ

あゆなを前にすると、不安と焦燥でどうにも冷静を保てねぇ。

ユズアが…あゆなが…この世界でも俺のものだという、確固たる事実と自信が欲しい。


「…すまない…」


か細く漏れたのは謝罪の言葉。

これから距離を縮めて仲を深めようって時に、何やってんだ俺は…ッ

後悔の念が押し寄せて、それ以上言葉が続かず、その場からも動けなくなった。


『…あ…いえ…私こそ大声でスミマセン。…もう私…行きますね…』


クルッと背を向け、足早に歩き出したあゆなを引き止めようと伸ばしかけた手を、再び引き寄せて爪が食い込むほど強く握りしめた。

今はまだダメだ。

まだチャンスはあるはずだ。

俺達がこの海で再会したのは偶然じゃねぇ。

昔、お前が言っていた吹き込まれた戯言(ざれごと)を思い出した。


『…偶然は、本当は必然で…それはもう運命なんだって…』


お前はそれを信じていたな。

だからあの時、俺も信じることにしたんだ。

偶然なんかで終わらせねぇ…絶対に。


あゆながバス停に辿り着いたのを遠くに確認し、俺も車へと戻った。

運転席に座り、ハンドルに腕と額を預け、盛大な溜め息を吐いた。


…はぁ…ッ…クソッ…

こうなったら時間の許す限り、この海に来てやる。

アイツとの接点が、情けなくもこの海しかねぇんだ。


ギアをドライブに入れ、サイドブレーキを外し、車を走らせた。

海から街まで一本道だから、否応でもユズアが佇んでいたバス停の前を通る。


すぐにバス停の側にあゆなの姿を見つけた。

見送った時には居なかった男が二人。

一人があゆなの肩を抱き、一人が行く手を阻むように立ちはだかっているようだった。


「何だ?あいつら…」


スピードを緩めた車をゆっくりとバス停に寄せる。

ニヤニヤといやらしい笑顔の男達に囲まれ、あゆなが完全に嫌がっていた。


――ブワッ…!!


駆け巡る強い衝動。

エネルギーの塊が全身を突き抜けた。



*

9 いつものこと〈リヴァイside〉→←7 与えられたもの



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 7.5/10 (88 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
69人がお気に入り
設定タグ:リヴァイ , 進撃の巨人 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:夢梨 | 作成日時:2018年11月4日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。