8 苛立ちの結果〈リヴァイside〉 ページ8
あゆなに突き飛ばされて瞬時に我に返った。
俺は今、何をした…?
キスを…したのか…?
コイツの了承も得ないで…
それも…強引に…
「良く知らない
こういう時、俺は途端に制御が利かなくなる。
目に見えない力が身体の奥から湧き上がり、全身に行き渡っていった。
ただ、女に対してこうなったのは初めてで、さすがに俺も放心状態だった。
どんな修羅場を迎えようとも、いつだって冷静に対応してきたじゃねぇか。
何故それがコイツ相手だと出来ねぇんだ…ッ
あゆなを前にすると、不安と焦燥でどうにも冷静を保てねぇ。
ユズアが…あゆなが…この世界でも俺のものだという、確固たる事実と自信が欲しい。
「…すまない…」
か細く漏れたのは謝罪の言葉。
これから距離を縮めて仲を深めようって時に、何やってんだ俺は…ッ
後悔の念が押し寄せて、それ以上言葉が続かず、その場からも動けなくなった。
『…あ…いえ…私こそ大声でスミマセン。…もう私…行きますね…』
クルッと背を向け、足早に歩き出したあゆなを引き止めようと伸ばしかけた手を、再び引き寄せて爪が食い込むほど強く握りしめた。
今はまだダメだ。
まだチャンスはあるはずだ。
俺達がこの海で再会したのは偶然じゃねぇ。
昔、お前が言っていた吹き込まれた
『…偶然は、本当は必然で…それはもう運命なんだって…』
お前はそれを信じていたな。
だからあの時、俺も信じることにしたんだ。
偶然なんかで終わらせねぇ…絶対に。
あゆながバス停に辿り着いたのを遠くに確認し、俺も車へと戻った。
運転席に座り、ハンドルに腕と額を預け、盛大な溜め息を吐いた。
…はぁ…ッ…クソッ…
こうなったら時間の許す限り、この海に来てやる。
アイツとの接点が、情けなくもこの海しかねぇんだ。
ギアをドライブに入れ、サイドブレーキを外し、車を走らせた。
海から街まで一本道だから、否応でもユズアが佇んでいたバス停の前を通る。
すぐにバス停の側にあゆなの姿を見つけた。
見送った時には居なかった男が二人。
一人があゆなの肩を抱き、一人が行く手を阻むように立ちはだかっているようだった。
「何だ?あいつら…」
スピードを緩めた車をゆっくりとバス停に寄せる。
ニヤニヤといやらしい笑顔の男達に囲まれ、あゆなが完全に嫌がっていた。
――ブワッ…!!
駆け巡る強い衝動。
エネルギーの塊が全身を突き抜けた。
*
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作者名:夢梨 | 作成日時:2018年11月4日 15時