43 今日の予定〈貴女&ﾘｳﾞｧｲside〉 ページ43
【ユズアside】
『理人さん、今日の予定は…』
「今日も午後からフライトだ。国内線だが…パイロットに欠員が出てな。早朝に連絡が入った」
『そう…ですか…』
少し遅い朝食の途中、今日の予定を聞いてみた。
フライトかぁ…。
今日は大晦日。
お正月なのに…新年を一緒に迎えられないなんて…。
「そんな顔をするな。お前の分のチケットを買ってある。仕事は休みだよな」
『…え？…』
「大晦日と正月を俺と過ごさないという選択肢はない。一緒に行くだろ？」
『いっ！行きます！！…嬉しい…』
「この時期だから、ホテルの部屋は俺と同室だがな」
『！？…それも…嬉しいです』
「そうか…」
僅かに口角を上げて、微笑む理人さん。
仕事なのに、私の事も考えてくれていた事が、何よりも嬉しかった。
クリスマスのお誕生日に引き続き、年越しもお正月も一緒に居られるんだ。
自然と綻ぶ口元を抑えることなく、頬を緩ませた。
【ﾘｳﾞｧｲside】
あゆなが、俺の傍で本当に嬉しそうに口元を綻ばせている。
それだけで幸せを感じられた。
あの日…。
ユズアを唐突に喪った痛手は想像以上で、生涯を終えるまで癒えることはなかった。
それを思えば、この世界にコイツが生きていてくれる…。
それが、俺の生きる支えで、この世界でも生きていこうと思える意欲を湧かせた。
だからユズアの生まれ変わりである、あゆなが、こうして俺の部屋で過ごし、一緒に朝を迎えられるなんて奇跡みてぇな事だ。
もう二度と…手離したくねぇ…――
『あの、理人さん』
「…何だ」
過去の思い出に浸る思考に割って入った、俺を呼ぶ鈴の音のように軽やかな声が現実に引き戻した。
遠い昔に聴き慣れた、耳に心地いい可愛い声に愛しさが更に募っていく。
『飛行機の時間は何時ですか？』
「14時だ」
『えっ！？やだ！急がなきゃ！！理人さん、私、帰ります！！』
「は？まだ９時半だぞ」
『女には色々、準備があるんです！』
「あぁ悪い…そうだったな…」
女の「準備」が、色々な面で大変なことを忘れていた。
まだまだだな…。
小さな笑いが漏れる。
「だったら送る。支度しろ」
『ありがとうございます！』
あゆなに満面の笑みを向けられ、心臓が割れそうなほど飛び跳ねた。
そうだった。
コイツの微笑みは、見慣れない内は直視したらマズい。
正気が薄くなり、理性を保てねぇ。
今にもその場に組み敷いてしまいそうな衝動を、小さな舌打ちと共に何とか抑え込んだ。
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作者名：夢梨 | 作成日時：2018年11月4日 15時
