41 焦燥〈リヴァイside〉 ページ41
『…っイヤ!止めてください!!』
突き飛ばされ、一瞬で我に返った。
目の前には涙目でワナワナと震えている「あゆな」が、嫌悪にも似た表情で、訝し気な眼差しを俺に向けていた。
『こんなッ…いきなりっ…』
あゆなは、言葉を詰まらせながらも、必死に何かを訴えようとしている。
俺は…何やってんだ!
焦りすぎだ!
コイツは、ユズアであってユズアじゃねぇ。
今みたいに、俺の強引な行為を許してくれる…
昔のような…そこまでの関係には、まだ至ってねぇんだ。
この1週間、連絡が出来なくて、今までに無いほど苛ついていた。
ユズアと交換した連絡先のSNSが、行った先の国で使えねぇ事をすっかり忘れていた。
これまで、日本にいる誰かと繋がる必要のなかった俺は、SIMカードも持っていない。
連絡の取れない間、あゆなが他の男に誘惑されてんじゃねぇかと不安で…。
インターフォン越しに聴いた、1週間振りのあゆなの可愛らしい声に、すぐにでもこの腕に掻き抱きコイツの全てを暴いて、俺への想いを確かめたいという衝動を抑えられなかった。
…クソッ…怯えさせてどうするんだ…ッ
「…すまない…ッ」
俯いて咄嗟にたった一言、謝罪の言葉を喉の奥から絞り出した。
あゆなは「え?」っと、小さな声を漏らして固まっている。
『…あ…いえ…私こそ大きな声でスミマセン…。やっぱり、軽い付き合いの方がいいですよね…』
「…は?…」
『それならそれで…かっ構わないんですが…ただ…玄関でするのは…』
「何…言ってる…」
『…え…えっと…身体だけの関係がいいんですよね?』
あゆなは俯きがちに目線を彷徨せ、サラサラと落ちてきた片方の髪の毛を指先で掬って耳にかけた。
そんな仕草をスローモーションで眺める。
あゆなの言葉を理解するまでにも、やや時間を有した。
「馬鹿言え!そんな訳あるか!俺はお前の全てが欲しいッ…身体も心も…ッ…昔から…それは変わらねぇっ!」
そう言い放ち、もう一度この腕の中にあゆなを掻き抱こうと伸ばした手を、はたと止めた。
ダメだ。
ついさっき拒否されたばかりだろうが…ッ
もう少し落ち着かねぇと…。
もやもやとした思いで色々と考えあぐね、我慢の意思が伝う行き場のなくなった手を、力任せに握りしめた。
その直後。
ふわっと舞う甘い香りと、首に絡みつく華奢な腕、頬に触れる柔らかな髪の感触に、思考が停止した。
『私も…理人さんの全てが…欲しい…デス…』
首すじに顔を埋めたあゆなの、消え入りそうな声で紡がれた言葉が、耳に届いた…――
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作者名:夢梨 | 作成日時:2018年11月4日 15時