31 迫る限界�� ページ31
「あゆな、話を――」
『――何を…話すんですか？帰ってください！私には話したい事なんてありませんから！』
早朝に空港へ行ったあの日から１週間後の夜。
自宅へ帰ると、いつかと同じようにリビングに理人さんが居た。
まさか、また蓮兄…ッ
心の中で蓮兄に文句を言って、理人さんに向けて投げつけるように言葉を放った。
忘れようとしてるのに、こんな風に顔を見てしまったら、また惹き寄せられてしまう。
すぐにリビングを出て、２階の自分の部屋へと階段を駆け上がる。
勢いよく開けたドアを同じ勢いで閉めて鍵をかけ…。
ドアにもたれ、その場に崩れ落ちるように座り込んだ。
私は斗真を好きでいるって決めたのに、どうしてまた私に逢いに来たりするの！？
あんなに綺麗な恋人がいるのに…ッ
どうして私に構うの！？
「あゆな、このままでいい。聞いてくれ。あいつは…凛花は俺の恋人じゃねぇ」
『…え…』
何言ってるの…あの人のホテルの部屋で一緒に過ごしたくせに、見え透いた嘘…。
『だって、あの人の部屋の洗面所にネクタイを忘れたって…そういう事ですよね？』
「確かに部屋には行ったが、うっかりシャツに紅茶をこぼしちまって、応急処置をするのに外しただけだ」
『…そんな言い訳…ッ…何の関係も無い私に言ったって意味ないです！』
「俺は…お前の誤解を解きたいだけだ」
『なら…それは今、叶いました。もう帰ってください！』
「…少しで…いい…顔を…見せて…くれねぇか…」
バッと顔を上げてドアを見つめる。
ドア越しにでも分かるくらい、切ない声音だった。
けれど…。
既に理人さんへの想いが復活してしまった私は、怖くてドアを開けられなかった。
開けてしまえば…もう二度と…
斗真の傍には戻れないと思った…――
.
拒絶したあの日から、理人さんが私に逢いに来ることはなく、クリスマスイブを迎え…。
仕事を終えた私は、斗真との待ち合わせ場所に少し早めに着いてしまった。
ディナーを予約したお店まで電車で行くことになり、ここを待ち合わせ場所に選んだ。
光輝く装飾を施された大きなツリーが中央に鎮座する、駅前広場。
今日はイブということもあり、カップルで溢れ返っていた。
ツリー前のベンチに座り、斗真から連絡が来ていないかチェックするために、バッグからスマホを取り出した。
斗真ごめん!10分くらい遅れる
あゆなわかった。ツリーの前のベンチに座って待ってるね
返信すると、目の前の人の波に視線を移した。
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作者名：夢梨 | 作成日時：2018年11月4日 15時
