4 前世の記憶〈ﾘｳﾞｧｲside〉 ページ4
「…ﾁｯ…」
やっと地に足を付けられ安堵しつつも、長いフライトが続き、ユズアを見つけたあの海に暫く行けなかった事に苛立ちを抑えきれず、つい舌打ちが漏れた。
ユズアに再会した日から、既に１ヶ月が過ぎていた…――
中学から高校の終わりまで、毎日のように見る夢があった。
目覚めても鮮明に記憶に残る夢。
今はたまに見るくらいだが、それが前世の記憶だと悟ったのはいつの事だったか…。
夢に出てくる前世の俺が、何よりも愛しく想い、大切にしていた女…「ユズア」を探す為に選んだ、今の俺の仕事は国際線のパイロットだ。
お陰様で、頭も目も悪くなく、健康で強靭な身体にも恵まれ、そして、緊急事態にも冷静に対応出来る資質があり、専門の大学を卒業した後、今の航空会社に就職し、難なく副操縦士まで駆け上がった。
その為、フライトが続く時は休日を挟みながらも１〜２週間、日本を離れる事がザラにある。
行った先の国では、真っ先に海へと足を運んでいた。
アイツの最期に交わした、再会の約束。
「巨人を殲滅したら、一緒に海を見よう」という果たせなかった約束。
この平和な世界の平和な国に生まれ、探していたお前も同じ国に生きているなら、今度こそ約束を果たせそうだ。
だが…。
「記憶がねぇんだったな…」
「また誰か見つけたのか？」
深く息を吐いた俺の背後から掛かった声に、少しだけ振り向く。
何の因果か、こいつがまた俺の上司だ。
エルヴィンは、同じ航空会社の機長で、ついさっきまで同じ機を操縦していた。
「あぁ…ユズアを見つけた」
「！？…そうか、良かったじゃないか。何を暗い顔をしている」
「…記憶がねぇんだ、アイツには」
「なるほど。それは困ったな…大抵、壁に生きていた者は皆、学生の頃までには全てを思い出す様だが…ユズアは…今何歳だ？」
「恐らく、俺と変わらねぇ筈だ。死んだ俺を迎えに来た後、転生しただろうからな」
「そうか…まぁ、お前と会っていれば、その内思い出すだろう」
「…ﾁｯ…そう思うなら、いい加減お前の激務に俺を巻き込むな。お陰で１ヶ月もアイツに逢えてねぇ」
「それはすまない。だが、来月も頼むよ」
相変わらずの胡散臭い微笑みを向けるエルヴィンに、盛大な溜め息を残し、足早に帰路につく。
何だかんだと文句を並べながらも、前世の記憶のせいなのか、結局俺は奴からの仕事の依頼を断れねぇ。
乗り込んだ運転席で再び溜め息を漏らし、エンジンをかけると、ユズアに逢えることを期待して、大きなスーツケースを積み込んだ車を走らせた。
*
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作者名：夢梨 | 作成日時：2018年11月4日 15時
