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12 車の中から ページ12

「あゆな!」


午前10時頃、自宅近くの公園前に停まっている車。

その前に立って手を振っている斗真に笑顔を向け、控えめに手を振った。

近くまで行くと、私が肩にかけていた少し大きな荷物を自然に斗真が持ち上げ、トランクに積んでくれた。


『ありがとう』

「あゆなは律儀すぎ。これくらい恋人なんだから当然だろ」

『…そう…なのかな…』

「ほら、乗れ!出発だ」


本当に楽しそうに満面の笑みで、助手席のドアを開けてくれた斗真。

格好良くて女の子にも優しい斗真は、私と付き合っている今もかなりモテる。

どうして私…だったのかな…。


「こっちの道から行くからな。何かあったら遠慮なく言えよ」

『…うん…よろしくお願いします』

「ほんと、律儀というか礼儀正しいというか…まぁ…そういうところも可愛いんだけどな」


意外と距離が近い車の中で、そんな事を言われて頬が熱くなるのを感じた。

照れる様子もなく自然と女の子を喜ばせる言葉をくれる斗真は、やっぱりかっこいい。

理人さんのことは忘れなきゃ。

こんなに私を想ってくれる斗真を傷つけたくない。


それから、会社のことや仕事のことや家族のこと、そして私達のこと…他愛ないお喋りを楽しんだ。

会話が途切れた瞬間、ふと何気なく窓の外へ視線を移した。


『…え…』


――…ドクンッ!


心臓が強く脈打つ。

脇道からゆっくり現れた車は…。


――理人さん――ッ!!


信号が赤に変わり、斗真の運転する車は減速して、ゆっくりと理人さんの車の前を通りすぎる。

理人さんは左折するために右から来る車へと視線を向けていて、私には気づいていない。

その変わり、理人さんの車の助手席に違和感なく座っている綺麗な女性と目が合った。

咄嗟に顔ごと視線を逸らす。

不自然すぎて自分でもおかしく思ったけど…。


なんだ。

そういう相手がいるんじゃない。

私…バカだな…。

どうしてか、理人さんが私を一途に想っているって信じ込んでいた。

だからあの日…。

あんな事したって意味なんてなかった。

私には斗真がいるんだから、勢いに任せて欲を出さなきゃ良かったんだ。


「あゆな、どうした?」

『…ううん、何でもない。知り合いかなーと思ったら似てる人だった』

「そっか。もう少しで着くからな」

『うん、温泉、楽しみだね』


そう言って微笑むと、真っ直ぐ前を見たままの斗真は…


「…あぁ、そうだな…」


それだけ言って僅かに頬を染めた。

珍しい。

あんまり私にはこういう表情を見せないのに…。

初めての旅行で気持ちが高ぶっているせいかな。



*

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設定タグ:リヴァイ , 進撃の巨人 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:夢梨 | 作成日時:2018年11月4日 15時

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