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待てない ページ33

それから幾つか店を周り、「急用が出来た」と言って帰ろうとする壱月と連絡先を交換しておく。

気持ちは伝えない方がいいと言う割には、Aさんについて色々と伝えてきたり、こうして二人きりにする辺り、彼自身も悩んでいるのだろう。

何にせよ、利用できるなら利用させてもらう。

彼がわたしの味方であるのなら、きっと彼女へ近付けてくれるはずだ。

「吉良さん?どうかしましたか?」

「いいや、何でもないよ」

わたしを呼ぶ声に応え、彼女と共に次の店へと足を運ぶ。

そこは女性向けのアクセサリーショップで、可愛らしいデザインの装飾品がところ狭しと並んでいた。

「吉良さん……ここ、女の人向けみたいですけど……」

「そうだね。君に似合うものがないかと思ったんだが」

先程彼女がしていたように、アクセサリーをひとつ手に取っては身につけている所を想像するように姿を重ねる。

彼女は、あの日と同じ大きなリボンで後ろ髪を結っていた。

「い、いただけませんからね……!?」

「それは、君にとってわたしが客でしかないからかな?」

「そういう訳では……」

彼女の否定を聞き、ほんの少し安堵する。

「では、Aさんにとってわたしはどういった存在なのかな?」

彼女は言いにくそうに言葉を詰まらせて目を逸らした。

「一応……お、お友達……だとは、私も思ってます……よ?」

「では友人に贈り物をする事に何か問題が?」

彼女は目をそらしたままで、否定の言葉はない。

「何かお返し、しないと……お友達なら、対等であるべき、です」

「……お返しか」

「はい……吉良さんは、欲しいものとかないですか……?」

彼女の心遣いは嬉しく思うが、欲しいものならば今は一つしかない。

「では、Aさん。君が欲しいと言ったら……?」

わたしの言葉を聞くと、彼女は顔を赤く染めた顔を隠してしまう。

「あ、あれ……本気、だったんですか……?」

「わたしはいつだって本気だよ」

彼女の手に触れ、顔を見せて欲しいという意志を示す。

恐る恐るといった様子で見えた瞳は、涙で揺らいでいた。

「ごめんなさい。それは……まだ、考えたいです」

俯く彼女の言葉は弱々しく、庇護欲と同時に加虐心を掻き立てられる。

時間が無い以上、あまり待ってはいられない。

「まだ?それは、いつまでに答えを貰えるのかな」

「っ……吉良さんには、やっぱりお返事できません……」

重ねた手を離そうとする彼女の手を掴み、わたしはそれを拒んだ。

誓約→←君を想うなら



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アーディ(プロフ) - 餡さん» コメントありがとうございます!本当はもっと短く纏めるつもりだったので、間に合うか間に合わないかの瀬戸際でヒヤヒヤしながら書いておりました。吉良さんの魅力が伝わっているなら何よりです。最高の褒め言葉ありがとうございます!読破お疲れ様でした! (1月31日 13時) (レス) @page42 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 完結おめでとうございます。まさか吉良さんの誕生日に合わせて執筆されていただなんて…!細密な描写が色んな視点で描かれていて、とても面白かったです。本当に吉良吉影という人物の魅力がたくさん詰まった作品だと思います。素敵な物語をありがとうございました…! (1月31日 8時) (レス) @page42 id: 493b9f8f47 (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - ゆーりさん» くそっ……じれってーな。俺ちょっと2人を進展させてきます……!(コメントありがとうございます!作者的にももどかしいです!!!) (1月26日 22時) (レス) id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーり(プロフ) - あー!!!もどかしい!ドキドキしますね…!!! (1月26日 16時) (レス) @page32 id: bb43593a3a (このIDを非表示/違反報告)
アーディ(プロフ) - のんさん» ありがとうございます、先はまだちょっと悩んでますが、更新頑張りますね! (1月11日 21時) (レス) @page9 id: 0218ed2c56 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:奇妙な前髪 | 作成日時:2024年1月8日 23時

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