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*

 「っ……?!」

 千鶴は声を上げかけたが、すぐにそれを飲み込んだ。

 月明かりの中になびく漆黒の髪。
 此方を貫くような、鋭い視線。

 少し離れたところに立つ薬研の顔が強張った。
 腰で鶴丸と骨喰が、懐で今剣が身じろぐのを感じた。
 私は慌てて、三振りを抑えた。

 ――動かないで下さいね。
 大丈夫ですから。

 ――……分かった。

 渋々と云った感じで、鶴丸が了承してくれた。

 「……運のない奴らだ」

 私に刀を突きつけたまま、その人は静かに冷たい声音で云った。
 けれど、今まさに私を殺さんとしている彼のその瞳には、何とも云えぬ人間らしい感情の揺らぎが認められた。

 「いいか、逃げるなよ。背を向ければ斬る」

 私はゆっくりと頷いた。
 それが、脅しでも何でもないと分かったから。
 すると彼は思いっきり眉間に皺を寄せ、苦々し気に深い溜め息を吐いた。
 場違いではあるが、その顔は何だか起こった時の長谷部にちょっと似ていると私は思った。
 刀が腰に収められるのを確認した薬研が、ほっと安堵したような顔になった。

 「え……?」

 千鶴が間抜けな声を出した。
 大方、こんなにもあっさりと刀を収めてくれるとは思っていなかったのだろう。

 けれど、その行動に驚いたのは、千鶴だけではなかったようだ。

 「あれ? いいんですか、土方さん? この子たち、さっきの見ちゃったんですよ?」

 例の戦闘狂さんが不思議そうに眼を細めると、土方さんとやらはますます渋い顔になった。

 「……いちいち余計なことを喋るんじゃねえよ。下手な話を聞かせちまうと、始末せざるを得なくなるだろうが」

 ……如何やら、【羅刹】はこの人たちの秘密だったようだ。
 これは、まずい。

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Chris(プロフ) - 魔導士カリナさん» コメントありがとうございます! 文体好きって言って貰えてすごく嬉しいです。応援……?! もうありがとうございますの一言に尽きます……。 (2017年4月3日 7時) (レス) id: 2c836ec423 (このIDを非表示/違反報告)
魔導士カリナ(プロフ) - Chrisさん!イベント参加、ありがとうございました!私が言って良いのか分かりませんが...私、Chrisさんの文体とか凄く好きなんです。もしよろしければ、これからも作品を応援させていただいて宜しいでしょうか...? (2017年4月2日 23時) (レス) id: 0cf79671fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Chris | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年3月27日 20時

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