宮と帰宅 ページ18
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「それって…もうバレていたと…?」
恐る恐る訊いてみると、少し考える素振りをして、
「あのときは確信じゃあないけど…
Aじゃなかったら誰なのって話だよね」
と得意気に言われる。
「それに、Aのこと好きだし。
気づかない訳ないって」
ぴん、と額を弾かれた。
それに驚いて額を押さえると、婚約者は笑っていて。
「っ…」
どこが、面白いんだ。
悔しいような、嬉しいような。
そんな曖昧な気持ち。
「…帰りたいです」
「え〜…?」
そう言っても、お腹に回されている腕の力は緩まない。
…まさか、離すつもりがないだなんて。
改めて自分の選択を悔やむ。
婚約者と会えて少しでも嬉しいと思ってしまった自分が馬鹿みたいだ。
「帰りたいです…」
「…それなりに、俺が良いところ育ちなの知ってるよね?」
「…ああ、はい」
「車の手配なんていつでも余裕だよ」
「(…いや、そういうことではなく)」
と婚約者にツッコミをいれるが、それもなんだか悔しい。
「で?帰る?送るけど」
「…もう、良いです…」
結局、私のほうが折れてしまった。
婚約者はさらにきつ〜く抱き締める。
「ま、でも帰ろうか」
とスマートフォンを取り出す。
誰かに電話しているようだ。
私はその間に立ち上がり、制服の汚れを叩いて落とす。
ふう、と上を見上げると、もう夕焼け空だった。
「(…結構な時間ここにいたんだ……)」
「さ、行こう?」
と手をさしのべられる。
もちろんその手を取った。
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「またね」
「はい…」
「明日の朝も送る?」
にやにやとした顔で訊かれた。
「…結構です」
「そんな顔しないでよ」
車のサイドミラーで確認してみると、怪訝そうな顔をしている自分がいた。
慌てて笑顔に戻し、婚約者に顔を向ける。
「…うん、その顔が好き」
と婚約者もまた笑顔になった。
自分が意図しなくても顔が赤くなるのが解った。
でも、今は暗いからきっと見えていないだろう。
いや、そうであって欲しい。
お互いに手を振った。
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るり(プロフ) - 今日ほんとに見返してたところの更新だったので嬉しかったです泣 この先のお話とかめちゃくちゃ妄想してるので、いつかお話になるの楽しみにしながらこれからも見返そうと思います! (2021年1月14日 0時) (レス) id: 1011553aa4 (このIDを非表示/違反報告)
月雫 runa - 完結おめでとうございます!! 最初から最後まで楽しめました! (2020年3月22日 12時) (レス) id: 7dc9d510f6 (このIDを非表示/違反報告)
おとは(プロフ) - はじめまして!スゴくよかったです(*^_^*) (2020年3月18日 7時) (レス) id: 083a813a8f (このIDを非表示/違反報告)
さくり@歌リス(プロフ) - ヤバい!最高でした(@_@) (2020年3月16日 22時) (レス) id: 0cd51e6ec6 (このIDを非表示/違反報告)
響(おと) - すき。 (2020年3月16日 11時) (レス) id: e976740a08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:田鈴 | 作成日時:2020年1月2日 17時