血霧の狂人其ノ十八 ページ18
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───その後、"干柿鬼鮫"は大名殺しと国家破壊工作を企んだとして里を追われる身となった。
奇しくも、"神楽ミズチ"と似た容疑をかけられて。
しかし、鬼鮫はミズチの真実を死んで直ぐ後に"とある人物"から知らされる事となった。
ミズチは裏切ってなどいない、むしろ何時だって里の為にと働いて尽くしていた。仲間を殺していたのも上からの命令であったから。他の人間にこんな汚れ仕事をさせない為に、何時だって裏の仕事を引き受けていた。
そして何より、ミズチは何時だって鬼鮫の事を思っていた……と、最期の後に、ようやく兄の心を知る事になってしまった事が、何よりもショックで、深く後悔をしたのだ。
誰よりも兄を、ミズチを見ていたというのに、僅かでも疑いを抱いた自分を恥じ、殺してやりたいと思った。
兄は最期に、
今でもハッキリと覚えている。震えたクナイを手に取り、喉を貫いた兄の手の温度。
鬼鮫の手を汚させまいと、自死を選んだ兄の最期の優しさ。それはあまりにも、悲しい優しさだった。
だから、鬼鮫はほんの僅かに、動揺した。
暁に入り、コンビを組む事になった相手の姿を見て、鬼鮫は目を見開いた。
長い黒髪、黒い目、声。
口調は違えど、ミズチと似た容姿をしているコンビとなる相手……"うちはイタチ"を見て、動揺した。
「(……分かってて黙っていらしたのか、ただ単に言う程の事でもないと思ったのか……随分と趣味がいいお方だ…)」
「行くぞ鬼鮫」
素っ気のない態度で前へと進むイタチ。初対面の挨拶で互いの立ち位置は決まったが……未だに鬼鮫は時折イタチの後ろ姿をミズチと重ねる。
頭では他人と認識出来ているが、それでもあの日の事が頭を過ぎり、酷く虚しくなる。
「?どうした」
足を止めてイタチが振り返り、何かあるのか?と、暗に聞いてきている。
「───いいえ、何でもありませんよ」
「そうか」と、ひと言返答すると、イタチは再び前を向き歩き始めた。
神楽ミズチ…兄より受け継いだ"鮫肌"を担ぎ直し、鬼鮫はイタチの跡をゆったりとした足取りで追って行った。
その手首には、くたびれた赤い髪紐が着けられていた。
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作者名:レキ | 作成日時:2020年4月20日 11時