38 欠けたグラス ページ39
春千夜side
久々に帰宅すると、少しだけ家のスペースが広くなっている気がする。Aが使用していたクローゼットを開けると、全てではないが何着か持ち出された形跡があった。
……意地張らずにとっとと帰って来いよ。かれこれAがこの家に帰らなくなってから2週間はとっくに経っていた。
時間は25時。そういえば、この2週間まともに飯も食ってなかった気がする。それでも腹は減らないし、何か口に入れようとも思わない。Aの飯以外、砂食ってるみたいな感覚だし、少しでも満たされればそれ以上の事はもう望んでない。
アイツ、体調大丈夫なのか。仕事をしていない時間、気が付けばAの事ばかり考えてしまう。俺から連絡したところで、あんな最低な事を言った俺に返事をくれるとは思わない。
無意識に零れる溜息。Aに……連絡してみるか?俺が謝らない限り、きっとAからは連絡なんて一切来ない。アイツの性格上、1度決めたら考え曲げない所があるし。
今の時間は……もう寝てるか。もう少し、日が昇り始めた頃にメッセージだけ残しておくか。
片手に握りしめていたスマホが不意に震える。もしかして……と淡い期待を込めたが、そんなはずもなく、電話相手は竜胆だった。
無視してやろうか、とも考えたが仕事の事だったら後回しになっても面倒なだけ。仕方がなく電話に出る事にする。
「もしもし……何だよ。」
「三途、今いいか?」
何処か歯切れが悪そうに確認をされ、微かな苛立ちを覚えながらも「早く用件話せ」と催促をする。
「……Aちゃんの事なんだけど。」
何で、てめえがAの事を話したいんだよ。もしコイツがAの事匿ってんなら引きずり出してでもこっちに連れ戻す。そんな事を考えていた俺は、予想もしなかった事を告げられる。
「Aちゃん、お腹の中にいる子ども堕ろすって言ってた。」
……何でお前がそんな事、知ってんだよ。その言葉すら、喉の奥から出て来ない。ただ、絶句しながらも、自分の中で感情だけが芽生えて動いていた。
連絡をしたら、カフェで話す事になり、そう言われた……と。そんなに、俺との子どもを産むの、嫌なのかよ。乾いた笑いが出てきそうになる。
でも、最初に拒絶をしたのは……俺の方だ。本当だったら、Aと一緒に喜ぶべきだった。それを俺は……しなかった。
もう変な意地なんて張ってる場合じゃねえ。ちゃんと、Aと話し合わないと、いけねえんだ。
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さきな(プロフ) - 漆Pさん» 長らくお待たせさせてしまい申し訳ありませんでした!(土下座)こちらの小説でもコメント頂けて嬉しいです✨あと少しで完結なので頑張ります♡ありがとうございます! (2022年9月24日 15時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
漆P(プロフ) - 更新再開おめでとうございます(*´ω`*)ずっと待ってたかいがありました!無理せずに更新頑張ってください!応援してます! (2022年9月24日 13時) (レス) @page47 id: 436ede0cdd (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - モックさん» コメントありがとうございます✨続き更新致しました!ぜひ読んで下さい!完結までもう少しのところまで来ておりますので、頑張ります!ありがとうございます! (2022年9月24日 11時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
モック - めちゃくちゃいいところでとまってる〜!! 続きちょ〜楽しみ☆ 春くんがイケメンすぎてにやにやがとまりませんwww 更新頑張ってください!応援してます♪ (2022年9月24日 10時) (レス) @page46 id: 17f5259717 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - ちょんちょんさん» コメントありがとうございます✨更新していきますので、最後まで読んでくださったら幸いです! (2022年9月24日 0時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2022年2月20日 0時