【薄桜鬼ｓｓｌ】笑顔の仮面をつけた少女 part２

６０．幻想的 ページ15

夏祭り会場に着く頃には、日が沈みかけていた。

黄昏の空に、笛や太鼓の軽快なリズムが響いている。

鳥居の向こう側、並ぶ屋台や吊るされた提灯の燈りが、幻想的な雰囲気を作っている。

花音「わぁー！きれーい！！」

目をキラキラさせた花音が、大地の腕の中ではしゃぐ。

翔太も、瞳を輝かせながら、ソワソワしていた。

大地「すげーな…！」

翔太同様、大地もソワソワしている。

3人のはしゃぎ様に、Aはくすくすと笑った。

貴女「屋台は、お参りを済ませてからね」

主催会場となっている神社は、この辺りでは1番大きい神社だ。

早速4人は、参拝の列に並ぶ。

参拝を終え、屋台の方へ歩き始めた時だった。

「A！」

聞き覚えのある声に呼び止められる。

Aがゆっくり振り返ると、声を掛けてきた藤堂をはじめ、寮の者達が勢揃いしていた。

Aはそれに会釈すると、翔太の手を引いて、屋台の方へと歩き出す。

大地も、花音を抱いて、その後に続いた。

翔太「お姉ちゃん、いいの？」

不思議そうな顔をする翔太に、Aは優しく微笑みかける。

貴女「いいのよ。さ、翔太、花音、何食べたい？」

翔太「僕チョコバナナ！」

花音「かのんはりんごあめ！」

大地「俺たこ焼き！！」

貴女「はいはい。じゃあ、買いに行こうか」

Aにとって、兄妹と過ごす時間が、何よりの宝物だ。

幸せを感じながら、Aは寮では見せない、心からの笑顔を浮かべた。









Aが大地と出掛けたことは、原田がみんなに話していた。

千と沖田、南雲は、もちろん機嫌を悪くした。

藤堂、千鶴、小鈴、山崎は寂しそうで、斎藤と永倉、土方は無反応だった。

とりあえず、女性陣の支度を待って、夏祭り会場にやってきた。

既に人で溢れ返った神社は、人に流されないようにするので精一杯だ。

先に参拝を済ませようと、全員で列に並ぶ。

もう少しで自分たちの番というところで、藤堂は、Aの姿を見つけた。

藤堂「A！」

呼び掛けると、Aはこちらを振り返った。

藤堂の声に反応して、他のメンバーもAを見る。

原田の話通り、隣には大地がいた。

しかし、Aの手は、小学生くらいの男の子の手と繋がっていた。

大地も、幼い少女を抱いている。

近藤以外の、全員の頭に、疑問符が浮かんだ。

振り返ったAは、こちらに来るでもなく、会釈だけして歩いていってしまった。

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