たまゆら花魁記 〜吉原編〜 【2】

よしわら63 ページ13

『こちらこそよろしく頼むよ…………』







柔らかい笑顔のその人は


とても清らかに見えた………………






器量の良さで言えば男花魁になれるだろう

けれどこの人は夢見町や吉原に不釣り合いな汚れのなさを感じる………………





A
『お名前は何とお呼びすればいいですか？』






『ん〜そういえば考えていなかったなぁ…

実は今はまだ名を名乗れないんだ………
何か好きな名をつけてくれないか？』




吉原には商売や家の都合で仮名で遊びにくる客も少なくはなかった





A
『それでは『清い』の字の清(せい)様とお呼びします』





清
『それはいい名だね

ありがとう………………………』





この人の笑顔はやはり清らかだ………………

遊女には無数の手練手管があるのにそんな駆け引きをしてはならないような気がしてしまう…………………





清様は豪商と聞いていただけあって宴もそれは豪華なものだった


みなに祝儀をはずみ宏太もいつもに増して目を細くしていた





宏太
『清様…………

そろそろAの支度に入ります』






清
『わかった

よろしく頼むよ』





A
『お先に失礼します………………』






宏太
『部屋で凛が夜着の準備をしているからね』





A
『はい…………………』





部屋に戻ると前まで私がしていたように幼い凛が床入りの準備をしていた





凛
『姐さんお相手の方はどんな方でしたか？』




A
『とてもいい方だったわ……………
澄んだ泉のような人ね』





凛
『澄んだ泉？……………』





A
『ふふ…………』





凛
『よくはわかりませんが姐さんの気に入った人で良かったです』





私は支度を済ませると突き出しの為に特別に用意された部屋へと一人で向かった

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