黒猫の恩返し【影片みか】 (ページ8)

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気まぐれ【6】ページ8

もうそろそろあがってきてもいいくらいだろうけれど、なかなか彼はお風呂から出てこない。

もしかしたら、ゆでダコになっちゃってるかもしれない。能天気な彼だからありえる。

さすがにちょっと心配になってきたので、ドア越しに彼を呼んでみることにした。

A「…ね、ねぇ、大丈夫？そろそろあがった方が…」

ｶﾞﾁｬｯ

「んあ？どないしたん？」

A「………」

突然ドアが開かれ、目の前に現れたのは、上半身裸の彼だった。濡れた髪をタオルで拭きながら、きょとんとした様子で私を見た。

「まさかあんた、覗き見しようと…」

A「んなわけないでしょバカぁぁ!!」

はい。平手打ち、入りました。

「うにゅっ!!ひぃぃ…もう痛いの嫌やぁ～！さっきもタオル投げられたし…」

彼は平手打ちされた右の頬をさすりながら、目に涙を浮かべた。

私は、やってまった！と焦り、彼の腫れた頬に手をよせた。

A「そ、そんなに強くしたつもりじゃなかったんだけど…ご、ごめん。痛かった…？その…男の人と喋るの慣れてなくて…あの…」

「えっへへ～。嘘泣きでした～」

A「！？は、え！？」

彼はにこにこと笑いながら、自分の頬に触れてた私の手を握った。

「やっぱりあんた、優しいな。…昔のまんまやわぁ…へへっ♪」

A「…っ！/////や、優しいとか、そんな人間じゃないし…優しさとか分かんないし…」

段々自分の顔が熱くなってきたのが分かった。
恥ずかしくなってきて、私は何も言わず洗面所へ入りドアを閉めた。

…知らない男相手にドキドキするなんて、どうかしてるよ、私…！