第30話 ページ37
役者の動線を確認する必要があった。
殺人予告犯に指名されているのが
役者たちである以上、彼等が
どの時刻にどこにおり、
単独行動の可能性はあるのはいつか
把握しておく必要がある。
そう考えているであろう福沢の
あとに続き、今回に劇の主役を
務める青年の楽屋に向かった。
「はあ?」
熱心に読んでいた台本から
顔を上げて、青年は整った顔を
歪めてみせた。
「本番前に、一体なんですか?
こっちは台本読んでるんですよ」
他の人間の姿はない。
椅子に浅く腰掛けた青年は
読んでいた台本を忌々しそうに
投げ捨てながら云った。
「こっちは本番前なんだ。本番前の
役者がどんな気持ちでいるか判りますか?」
福沢は黙ったままだった。
「おれたちは潜るんだ。別の世界、
別の人間の中に。そのために一年近くも
稽古してきた。邪魔する奴がいたら
殺してやる」
それから机の上にある。
水も入った大型容器が置かれていた。
空になった水杯を福沢に差し出す。
黙って福沢が注いだ水を
もう一度飲み干してから、青年は
「集中してるんですよ」と云った。
見れば心なしか顔色も青白い。
神経質そうな目元には薄く隈が浮かんでいる
「職務は尊重する」
福沢はその顔色を見ながら云った。
「だが殺される可能性があるには君たちだ。
公演中、一人になる時間はあるか?」
主役の青年――村上はさらに何か
言い返そうと息を吸ったが、
諦めたように息を吐いた。
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読書日和(プロフ) - あい様、教えて下さりありがとうございます( > _ < )修正しておきました (2019年3月9日 7時) (レス) id: 074c26cf03 (このIDを非表示/違反報告)
あい - あの、19話と20話が同じなんですけど。 (2019年3月8日 21時) (レス) id: ba4bf15776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:読書日和 | 作成日時:2019年2月19日 21時