25 ページ25
「目の前に極上の餌があるのに、食らいつかない鮫は居ないと思うの」
「……好き」
ポロッと口から出た言葉。ロボロは慌てて口を塞ぐが、Aは動揺の色を見せない。何故ならば、男が彼女に好意を持つのは当たり前で、それがグルッペンであろうが、皇帝であろうが、世の中の理であるから。常識的なことは驚かない。
だが、その彼女の余裕をかました態度がロボロの琴線に触れた。ロボロは彼女の肩を掴んでベッドに押し倒す。ギラギラと目の奥に滾る獣欲。
「汚らわしいわ」
「言ってろ、カス」
彼女の仮面を剥がすためにとったロボロの策は、サイコパスさが滲み出ていた。彼女の体に馬乗りになって動けないようにし、首に手をかける。ロボロは手に力を込めて首を絞める。
「ッ゛……ぁ゛」
涙目で抵抗するが、ロボロの力には敵わない。しかし彼女は1度ゾムに敗北を喫してから、変わった。意識が落ちる寸前までずっと表情を変えずに、余裕の笑みを浮かべてみせた。生理的な涙は流れても、感情的なものは無い。
「泣き喚けや……死ぬぞ、お前」
「っふ、」
まだ鼻で笑う余裕がある。それを見たロボロは彼女の首から手を離した。くっきりと赤黒い痣が首に残る。痛々しいそれに顔を歪めたロボロは、ただただ劣等感を抱いて彼女に背を向ける。
「お前の心が欲しい」
「誰かにあげる心なんて持ってないわ。私一人のもので十分。私に恋しても虚しいだけよ。私はインテリアや玩具と恋をする気は無いの」
「……屑やな」
「いい子ちゃんとの恋愛がいいなら諦めなさい。犬になるならいつでもいらっしゃい。首輪をつけて飼ってあげる」
「死ね」
「嫌よ」
そう言うとAは立ち上がってコツコツとヒールを鳴らして部屋を出て行った。彼女の部屋に取り残されたロボロは、彼女の首を絞めた手を握る。柔らかくて白い肌についた自分の印。悪い気はしなかった。彼女を汚してやったという征服欲が今更込み上げてきた。
「はぁ……」
恍惚とした息が漏れる。考えれば考える程彼女に落ちていく。もう今更他の女なんか見れない。彼女を知ってしまったら、転換なんかできやしないのだ。
医務室に向かっていたAは、途中で一般兵とすれ違った。20人ほどの大人数でまとまっている。訓練終わりなのだろう。これから1杯行くか、なんて話をしている。
「A様……」
「A様だ!!!!」
美しすぎるが故に、様、なんて呼ばれている。彼女の道を塞ぐ彼らを、Aは冷ややかに見る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 865人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無していう名前の名無し - しゅ、しゅきれぇしゅ‥‥‥。翻訳 やっばばばばば、ワイのドンピシャｷﾁｬｰーーーーー神すぎる‼︎‼︎好きです‼︎‼︎。 (8月11日 15時) (
レス) @page50 id: cfc3f2d0fe (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - スッゴい面白かったし最高でしたぁぁぁ!!!まじで神ですね!!!! (2022年12月10日 13時) (レス) @page48 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 完結おめでとうございます！！！！かわいい愛のお話だったなあとしみじみ感じております。ありがとうございます。ひよこの子様の作品の主人公ちゃんってみなさんお可愛いですし生き方に尊敬してます。ありがとうございます。体調にもお気をつけください。好きです。 (2022年9月25日 10時) (レス) id: 0350dafbfb (このIDを非表示/違反報告)
みずき - ん“ん”ん“！！！ック…！どう”どい“！！完結おべでどうございまず！！(泣) (2022年9月25日 2時) (レス) @page45 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
カンナ(プロフ) - むむさん» 教えてくれてありがとうございます、これから気おつけますm(*_ _)m (2022年9月25日 0時) (レス) id: 07b6abd3f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひよこの子
| 作者ホームページ：
作成日時：2022年9月14日 17時
