与謝野先生の妹,無明の王と政略結婚しました【条野採菊】 (ページ16)

今日:5 hit、昨日:1 hit、合計:23,884 hit

風邪② ページ16

時間は少し遡る。
──────────────────
ﾋﾟﾛﾘﾝ

条野の携帯の着信音が猟犬の職場に響いた。首を傾げながら取り敢えずメッセージを再生する。

〘ｺﾎｺﾎ…御免なさい風邪を引いてしまっ…た様です。でも,姉さまが来てくれるので…安心して下さい〙

眉間にしわを寄せてガクリと項垂れる条野。

「症状と体温ぐらい…報告してくださいよ
馬鹿ですね…」

声からして喉が痛いのだろう。其れに熱の所為で息苦しそうな呼吸も聴こえてきた。Aの事が心配で居ても立っても居られない。

「後で…電話をかけてみましょう」

──────────────────

仕事が一段落ついてAに電話を掛ける条野。
だが,何時まで経っても応答してくれない。

「真逆…」

すると晶子の方から電話が掛かってきた。

〘出来るだけ早く帰って来な。
あとゼリーとか食べやすい物もお願いするよ。
先刻見舞いに来たらAがぶっ倒れて居たよ〙

〘はぁ！？〙

〘いいから早く!!〙

副長に事情を説明すると「さっさと帰れ!Aが心配じゃ」と早退させてもらった条野。手早く頼まれた物を買って,自宅へと急いだ。

「Aさんは…」

「寝てるよ」

Aの部屋にそっと入る条野。すると晶子が帰る準備を始めた。

「妾(あたし)は帰るよ。後は任せるね」

「ありがとうございます」