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「お花屋さんってさ、なんか小さな世界みたいだよね」
風磨くんはお店の中をぐるぐる回りながらレジに座っていた私に声をかけた
「色んな花があって、色んな色があって。
みんな違うのに同じでさ、こうやってひとつの場所に集まって仲良く咲いててさ」
と、近くにあった向日葵に手を伸ばす
「上に伸びなきゃいけないって誰かに教えられたわけでもないのに、なんとなく、だけど健気に空に向かっててさ」
頑張る、とか努力する、とか
成長する、とか次へ行くとか
人は当たり前のようにその言葉を使って、当たり前のようにそれが正解だと思っていて
「成長することをやめたら、誰にも見てもらえなくなっちゃってさ。例え枯れても誰にも気づかれなかったりして」
風磨くんは、楽ではない道を歩いてきた気がする人だ
引かれてあるレールを無視して、歩き出そうとする人だ
「俺も、色々あったよ。思うように咲けない時も、枯れそうになる時も。
…いつも綺麗な花に囲まれて、俺なんか目立ちもしなくてさ」
風磨くんは優しく微笑むと、私の元へやって来て腕を引いた
「でもお花屋さんは、全部の花を見てる。小さい花も、枯れそうになってる花も、同じように面倒見てさ。言葉なんか通じないのに心配したり、熱くなったりして」
だからここに在る花たちは幸せだな、と彼は笑った
「俺は、Aちゃんのお花屋さんになりたいんだ」
彼はジョーロを手に取ると、私の手の上に水をかける仕草をした
「Aちゃんに元気がない時、枯れそうな時、俺が1番に気づいて水をあげたい」
私はそれを、ただ黙って見ているしかなかった
「お花屋さんって素敵だね」
長年私が追いかけていた答えを、風磨くんは意図も簡単に導いてしまったような気がした
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えつ(プロフ) - あいさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです^^続編もよろしくお願いします! (2019年4月24日 23時) (レス) id: 94efd89660 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - はじめまして。この作品すごく好きです!一気に読んでしまいました。移行後の続きを楽しみに待ってます。 (2019年4月24日 17時) (レス) id: 88ef7968ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えつ | 作成日時:2019年4月6日 22時