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7年前までは、集落の長である翁が結界を張りめぐらせていた洞窟のなかで暮らしていた。
「人喰いの神様」といわれた大鵬に嫁ぐため、私は生まれてからずっと、周りとは隔たれて育った。
その時は知らなかったけど。……世界は広くて。多様性に満ちていると知った。

でも、私が知ったなかで一番大切なのは、私が嫁いだ神様……大鵬のこと。
大鵬は「人喰い」と呼ばれていただけれど。
全然そんなことはなかった。
彼が人喰いとされたのは、人の気を喰らうから。
でも。
めったやたらに喰らうわけじゃない。

人の祈り。……神様を信じる心が、そのまま彼の力となると知った。
人から力をもらう代わりに、人の祈りに応える。……だから、彼は神様と呼ばれるようになったのだ。
そして。
特に力となるのが、強い神気を持った者の祈りなのだと教わった。
私は、自覚はあまりないけど、強い神気を持って生まれたらしい。だから、神様の花嫁に選ばれた。
彼は「花嫁」と呼ばれ名前のなかった私に、Aという名前をくれた。
いつだって、明るく、笑いかけてくれた。
今ならわかる。彼は、人喰いと呼ばれているけれど、人を殺めて食べたりしない。
むしろ、人が大好きで。一緒にいられることが嬉しいんだろうなってことが。

私も、そんな大鵬を好きになった。たぶん、今まで花嫁になった人たちもそうなんだろうな、って思う。
嫁いでから教わったけど、花嫁としては迎え入れられても、正式に夫婦になれるのは、15歳になってから。
今は白い和紙で一つくくりにして垂らしている、地面すれすれまで伸びた黒髪を、毎日、全部結い上げるようになってから。
だから、私はそれを楽しみに思っていた。
――あと、4か月もすれば新年だ。私は15歳を数える。
そうしたら、今までの他の花嫁と同じ。
私も正式に大鵬の妻になれる。
早くその日が来ればいいと思っていた。


*
「それにしても、A。お前、突然鞍馬に行くとか言い出すのはやめろ」

回想にふけっていた私に、青蘭がむすっと小言を言ってくる。

「だって、めったに実らない大鵬の好物だよ!? せっかくなら食べさせてあげたいじゃない」

「……付き合うこっちの身にもなれよな」

「えー。でも、青(せい)だって、大鵬が喜ぶと嬉しいでしょ? 私と居るのも大鵬の命令があったからって、言ってたじゃない」

「お前……まだ、昔言ったこと根に持ってるだろ」

じと目でこちらを向いた青蘭は、少し肩を落としている。

▼→←転章―14歳の夏―



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設定タグ:和風ファンタジー , 妖怪 , 羅刹   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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一花(プロフ) - 零玲飛(れいれと)さん» コメント有り難うございます。そう仰っていただけ、非常に嬉しいです。ここまで目を通してくださったことに感謝します!! 本当にありがとうございます。 (2015年1月28日 21時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - 感動して泣くかと思った。お疲れ様です。 (2015年1月22日 20時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂さん» ありがとうございます。……誤字量の多さが(-_-;) しっかり読んでくださり感謝します。また、後日直します。そして、番外編の件……有り難うございます! おそらくひと月以上開けて、とか忘れたころになるかと思いますが、宜しければ、お願いいたします(多謝) (2015年1月15日 22時) (レス) id: c6c51ef31b (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - (続きです) 43話目の下から9行目 「まずはこのの人の」→「まずはこの人の」 だと思います! 一応番外編までは確認しようと考えておりますが、もし本編のみで良ければ返信くださると助かります。あ、遠慮はなさらないでくださいね。 (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
光珂(プロフ) - 深夜にすみません。 37話目の下から16行目 「それだだけ」→「それだけ」。 40話目の13行目 「私をの力を」→「私の力を」。 同じく下から8行目 「温かな光のなで」→「温かな光の中で」。 41話目の9行目 「大鵬のい気配」→「大鵬の(いる)気配」。 (続きます) (2015年1月4日 2時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年8月31日 10時

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