夏が死んだその日【文スト】【東京喰種】

歩んだ道 ページ3

「太宰！！」

「わかってる！」


太宰さんは椅子に座る、私に触れた。


「もしかして異能力がこの馬鹿げた力だと思ってる？」


私は太宰さんに触れられている方と反対の腕を広げ、縄をぶちぶちぶちと、激しく音を立てて切った。


「…異能力、実は持ってないんですよ。」


そう微笑むと、オフィス中に衝撃と困惑の空気が流れる。
当たり前だろう。
だってこの世界は喰種とヒトじゃない。人と特異人なんだから。
特異は異能力者として扱われる。
私は自分の尾赫を出して優しく撫でる。


薄らと、忘れていた記憶が記憶の破片が繋がった。


「…この世界は歪んでない。なにせ喰種が居ないからね。」

「喰種…？」

「…この世界の人は知らなくていいものですよ。
ただ、私が言えるのは。
私がこの世界の食物連鎖の頂点にいる。」


私は私のマスクをつける。
草食動物の頭蓋骨のような骨のマスクを。
草食であり、肉食。


「私がもう一つ確実に言えるのは、この探偵社には後悔があります。何も活躍できないこと。
それが、後悔です。」


ただ、来た道は戻れない。一歩その道を進んだら変えることはできない。
彼が、元に戻ることがなかったように。
白髪になった彼はもう二度と、優しい彼には戻れない。記憶をなくして別人として生きるしかない。
でもそんな彼の名前が、思い出せない。


「…何かの機会があったら。」


私は呆気にとられる彼らを背にして、人混みが少ない道に繋がる窓を開ける。
そして、足をかける。


「ち、ちょっと！！Aちゃん、早まるのはよくないって！！」

「まあ、まあ。喰種ならこんなこともできちゃうんですよ。」


私はそのまま窓から飛び降り、向かいのビルの壁に赫子を使いしがみつく。
彼らが何か言っていたのを無視し、家に最短距離で向かった。

拝啓カフカ→←敵対意識さえなければ

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