夏が死んだその日【文スト】【東京喰種】

夢の続きが見たかった ページ17

そこで、私の儚い幻想は終わった。
しかし、今の私にはその先がよくわかる。
この後は店長が私にバイトをするのか聞いてくる。

いや、よくはわからないのかもしれない。
その後が曖昧だ。

私はアオギリよりはマシな、暗い、オレンジ色に暗い地下をただぼぅっと見ている。
まるで全くの別人の視点から見ている様な、分離している様な感覚に陥る。
このままだと私が何処かへ飛んでいきそうだ。

そういえば中也さん来ないな。
今日は忙しいのかな。


その日はそう思っただけだった。


しかし、その日を境に中也さんがくることはぱったりとなくなった。
それと同時に夢の続きが見れなくなった。
空腹は実験のたびに食べさせられる人肉で満たされていた。
彼にもう一度会いたかった。
そして夢の続きを見たかったなと、思う自分がいた。

ただ、ただ、家畜の様だった。
たらふく食わせて貰える訳ではない。
食べることができても逃げれるわけでもない。
寝て起きればいつもの流れ。

半分この生活に慣れてしまった。
でも生活に慣れても慣れないものが一つあった。

痛み。

それだけ慣れきれなかった。
最近は幻想に縋ることなく1日を終える。
そろそろ再生が間に合わなくなってきた。
元気になるくらいの肉を与えられなくなってきたからだ。
なんなら、最近の彼の、拷問さんの趣味は「空腹がどこまで行けば再生できなくなるのか」とか「どれくらいの肉で再生できるのか」だった。

彼は、金木研はもっと辛かったのだろうか。
赫者になることすら気にならなくなるほど、辛かったのだろうか。
それなのに彼は生きることをやめなかったのは何故だろうか。

私は恐ろしく、精神的に疲労困憊していた。
学校が怠くて休みたいだとか、テストが自分が勉強しなかったせいで悪い点数をとって辛くなるだとか、そんな事が可愛く思えてきた。
可愛い、じゃない。
まるで羽毛布団の様にふわふわで、柔らか感じる。



早く、地獄が終わることを願うのではなく、


早く、この地獄になれることを願っていた。

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