彼の話 私の話 ページ16
枕を背もたれのクッションの様にしてゆったりと座りながら彼のしばらくの間、本の話で盛り上がっていた。
彼は背もたれのない椅子に少し猫背気味に座っていた。
まるで入院している人とお見舞いに来た人の様だ。
そして何より、窓から入る暖かい毛布の様な光がそのイメージをより強くさせていた。
彼と中原中也の詩の話で盛り上がれるのはとても嬉しかった。
それに彼は小説をたくさん知っていた。
詩ばかり読んでいるタイプだが小説にも興味がある私にとって彼はまるで一個の図書館の様に思えた。
「こんな本は?」と聞けば「うーん」と少し唸り、「これはどう?こんな話なんだけれど」とお勧めの本を教えてくれた。
どれも魅力的だった。
しかし私にはお金がなかった。
そのことを言うと、「なんなら貸してあげるよ。」と笑顔で返してくれた。
恋愛として彼を見ることはないと思ったが、本当にいい友達になれる、そう思った。
あれからしばらくして、彼の境遇についての話題になった。
どうやら彼はリゼさんのせいで喰種になってしまってらしい。いや、これだと語弊があるか。
「…リゼさんかあ…。懐かしいな。」
「会ったことあるの?」
「勿論。すごく綺麗な人だった。」
リゼさんについての話はこのくらいで終わった。
互いにリゼさんのことは余り知らないのだ。
私は人から喰種になっての味覚がどう変わったのか聞いた。
「食パンとか、ヒデ…僕の親友が買っていてくれた食べ物も全部、食べられたものじゃないよ。
…あんなに、美味しかったのに。」
「そうなんだ…。」
そう言う彼はどこか申し訳なさそうな顔をしていた。
それから私の話になった。
「お母さんとお父さん、人間なんだ。」
金木くんは目を見開いた。
彼は表情に出さないが目には出す。
「検査しても血縁関係はあるし、なんでかわからなかったんだけどね。」
「え、お父さんとお母さんは知ってるの?君が喰種だってこと…。」
「いや。私が異常なのは空腹を感じた時から分かってた。」
「じゃあなんで検査なんてしたの…?」
「お母さんとお父さんが互いに怪しんだ結果。」
そう笑う。
まだ歯磨きが1人でできないときに、うがいをした中から取り出したと言う。
情けない。
互いに疑ったと思ったら、互いに助けを求めるし、凄く情けない。
「…お父さんとお母さんはいていない様なもんだよ。」
そう言ってしばらくの間が流れた。
その間を破る様に、ガチャリと扉が開いた。
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hitoesasami(プロフ) - 珈世さん» >>また、他にも評価が高い作品が多い中で、この作品を読んで頂きありがとうございました。 少しでも楽しませられたら幸いです。 本当にありがとうございました (2020年2月20日 7時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - 珈世さん» ご指摘、ありがとうございました。本当に助かります…orzすぐ、誤字や誤った設定をしてしまう癖があり、誤字などがある作品の印象って悪くなると思うんです…。なので、珈世さんのような方がいらっしゃると本当に助かりますorz >> (2020年2月20日 7時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - Nightさん» >>また、文ストと混ると言うことは、文ストは好きだけどグロは苦手、と言う人も読めるような、マイナスな印象を与えず書けていたみたいで良かったです。 最後になりますが、他にも引き寄せられる作品がある中で読んでいただき本当にありがとうございました。 (2020年2月20日 7時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - Nightさん» Nightさん、コメントありがとうございます。内容を好んでいただけて、本当に嬉しい限りです…昇天できます…。それと、文ストと混ぜる、そして文ストの世界に転生する夢主が喰種という不思議な設定が上手く惹きつけられる要素になっているようで安心しています…orz >> (2020年2月20日 1時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
hitoesasami(プロフ) - 夜雨ナナトさん» >> 最後になりますが、数多くの作品の中でこの作品を読んで頂きそして、応援していただき本当にありがとうございました (2020年2月20日 1時) (レス) id: 41b3c0e585 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hitoesasami | 作成日時:2020年1月15日 0時