検索窓
今日:27 hit、昨日:26 hit、合計:396,361 hit

+++++ ページ25

.


「この町は随分と変わったな。
時代が変われば、生きる人も環境も変わるのは致し方ないことだろう?
なぁ、ぬらりひょん」



ただ、疑った
自分が今耳にしている誰かの声
それがあまりにも自分が長年求めて、求めて、でももう二度と手に届かないと思っていた女の声にそっくりで
喋り方さえも全く同じで



嘘だ



そうとしか、思えなかった

でもこの声は間違いない
ワシがあいつの声を間違えるはずがない



ワシは、恐る恐る振り向き

小さくその女の名を、呼んでみた



「…………A…………?」

「数百年ぶりだな、ぬらりひょん」



そこに居たのは、最後に見た頃とは全然違う
そして出会った頃よりも幼さの残る顔立ちをした



この世の何よりも愛した妻だった



「な、ぁ………」



喉が引っ付いたかと思った
思うように言葉が出ず、何をいえばいいのかもわからず
だがAは、ただ愛おしそうに己を、見ていた



「A……!!」



気づけば少しばかりあった距離を一気に詰め、名を呼んで強くその女を抱きしめていた
ふわりと香る、花の香りに心が歓喜に染る



「A…本当にAなのか!?
なぜ、いや、そうじゃなく、いや、ああ!!
頭がこんがらがる!!」

「ふふ、そう慌てずともいい」



Aがいる
それだけでワシは混乱していた
何故ここにいるのか、幽霊なのか、生きているのか
どうして
聞きたいことがありすぎて頭の中が整理出来ず

そんなワシを予想していたのか、Aは体に回していたワシの手を一つ取り、胸に当てる
そうするとそこからトクン、トクンと規則正しくも力強く脈打つ心ノ臓の鼓動を感じた



「私は幽霊などではないぞ。
ほら、鼓動を感じるか?私は、生きているぞ」

「…………あ、ぁ………ちゃんと力強く、脈打っとるの…
あんたらしい、強い鼓動じゃ」



ああいかん
気を抜いたら涙が流れてしまいそうだ
ワシはそんな自分を見られたくなくてAを強く抱きしめてしばらく動かずAの鼓動と香りを感じていた
今ここにいる、存在していることをちゃんと体と心の全てで感じたかったから

だが、いつまでのこのままでは何も話が進まないと思ったワシは渋々腕を離す
本当ならばまだまだ、いや、ずっとこの腕の中に閉じ込めておきたかった



「すまんが、一から説明してくれんか?
あんたが生きてるってのはわかったが全くわからん」



まずはそこからだ
状況を整理せねばと思って言ったのに



.

+++++→←愛しきヒトよ─ぬらside─



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (245 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
598人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - printemps(プランタン)さん» そうなんです。一応最強設定ではありますので…^^; (2020年5月21日 15時) (レス) id: 9e3e8858ee (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - しろくまさん» ご期待に添えたようでよかったです(*^^*) (2020年5月21日 15時) (レス) id: 9e3e8858ee (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - もう知ってるけど、夢主最強説 (2020年5月17日 10時) (レス) id: a86d5a1323 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま - 更新ありがとうございます!わぁ(*´▽`*)リクにお応えして下さりありがとうございます!めちゃくちゃ面白かったです笑 鴆様流石ですし、狒々のなんとも言えない子供感がたまらなかったです!楽しみに待ってます!更新頑張ってください! (2020年5月16日 20時) (レス) id: 4a9ec96a98 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 木乃伊さん» ありがとうございます!更新頑張りますね! (2020年5月16日 19時) (レス) id: 9e3e8858ee (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2020年3月21日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。