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愛しきヒトよ─夢主side─ ページ20

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待ち合わせの時間に言われた場所で私はただ待っていた
鯉伴によるとここに鯉伴が呼びに来るそうな



「おふくろ!」

「…鯉伴」



つい数時間前まで会っていた鯉伴はその時の様子と変ることなく片手を上げ笑みを浮かべて近寄ってきた



「待たせちまったか?」

「さほど待ってはおらん」

「なら良かった」



すると鯉伴は何を思ったのか、私を抱き上げた



「!?り、鯉伴?何をする?」

「あの場所が結構山深いところってのは知ってんだろ?
その格好じゃあ時間かかるからな。
このまま行った方が早い」

「…それはそうだが」

「それに着物も汚したくねーだろ?
ここは息子に任せときな」



パチンとウインクをする鯉伴



「…………なら、よろしく頼むとしよう」

「おう、任しとけ」



鯉伴は私を抱いたまま妖怪しか無理だろう速さで山をかけ登った



















「よし、ここまで来りゃ大丈夫だろ」

「世話をかけたな」

「いいや?問題ねーよ」



地に足をつけ、さほど遠くないあの場所への道のり
心臓が少しずつ音を立てていく



「ここからは、おふくろ一人で行けるか」

「私を誰だと思っておる」

「そりゃ失礼」



鯉伴の楽しそうな、嬉しそうな顔



「………じゃあ、行ってくる」

「ああ。
俺は帰ってるからよ。二人でゆっくりしてこいよ」

「ありがとう、鯉伴」

「おふくろの為ならな」



親父の為にはこんなことしねーよ、と笑うから私も笑みをこぼす



「よし、行こう」



そうして私は一歩、また一歩と地を踏みしめた









この着物は戦闘用に改造した着物ではない
極々普通な着物
故に慣れたものではあるがあれに比べたら動きづらさを感じつつ道を行く

ドキドキと脈打つ心臓はただ緊張のために大きく脈打っているのか、標高が高いために早く鼓動しているだけなのか



「はぁ…」



着いた



下に向けていた視線をあげると開けた場所があり、そこの奥で一人佇み町を眺める男が一人



私の、全てを捧げた男がいた



「ッ」



ドクンッと一度大きく脈打った心臓







そこにいる



あの男が







私の全てを奪い





私が全てを捧げた男が









唯一私がこの世で愛し





この世で誰よりも私を愛してくれた男が









「…あいつが亡くなってもう何百年経ったかのう…
あいつはこんなにも変わっちまった町を見て、なんて言うのやら」



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(プロフ) - printemps(プランタン)さん» そうなんです。一応最強設定ではありますので…^^; (2020年5月21日 15時) (レス) id: 9e3e8858ee (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - しろくまさん» ご期待に添えたようでよかったです(*^^*) (2020年5月21日 15時) (レス) id: 9e3e8858ee (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - もう知ってるけど、夢主最強説 (2020年5月17日 10時) (レス) id: a86d5a1323 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま - 更新ありがとうございます!わぁ(*´▽`*)リクにお応えして下さりありがとうございます!めちゃくちゃ面白かったです笑 鴆様流石ですし、狒々のなんとも言えない子供感がたまらなかったです!楽しみに待ってます!更新頑張ってください! (2020年5月16日 20時) (レス) id: 4a9ec96a98 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 木乃伊さん» ありがとうございます!更新頑張りますね! (2020年5月16日 19時) (レス) id: 9e3e8858ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年3月21日 20時

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