第80夜 神田の心情 ページ23
__カタンカタンと,小刻みの揺れがリズムよく座席から伝わってくる。
腕を組んで目を閉じていた神田は,ふと前の席に座るAを見つめた。
ゆっくりと流れる窓の外の景色へと目をやっているAは,やはり何かが
いつもと違う。
具体的にどこがと言われると答えにくいが,まとっている空気が確かに変わっていた。
神田 「・・・・・。」
様子が違うからと言って,そこをわざわざ指摘して聞いたりするほど
自分たちは親しい間柄などではない。
そして,自分がそんなことを気にする性分でないことも理解しているのだが
どうしてもAのことを考えてしまい,神田は一つ舌打ちをした。
・・・教団に来た当時から,Aは極力自分の感情を押さえこんでいる節が
あった。
常にポーカーフェイスを装い,必要の時以外は自分から口を開くこともない。
かと思えば,自分との初任務の時に挑発して来たり,マテールの町で新人に
高らかに意向を宣言したり。
何のためにエクソシストになり,その目的は何なのか,今一掴めない人物。
それでも,この3カ月の間に,周りの奴らに少しは感情を見せるようになっていた。
注意しなければわからないほどだが,確かに,Aの態度は当初の冷たいもの
からやや軟化していたのだ。
それが今はそんな兆候が嘘だったかのように,また冷えた目をしている。
いや,さらに感情を奥底に沈め,ただ動いているだけの人形に似ているかも
しれない。
神田 「・・・チ。」
ここまで物思いにふけっていたところで,自分が思いのほかAのことを
よく見ていたのだと思い知らされ,その事実に苛立つ。
思い出すのは,高熱を出して自分の手をすがるように掴んできたAの姿だった。
追い打ちをかけるように,最近頻繁に見るようになった,『あの頃』の夢。
違うと何度否定しても,心のどこかで期待を捨て切れずにいる。
_____『ユウ。』
会う度に,幸福そうな笑みを浮かべて自分の名を呼ぶ少女。
昔のことを思えば,浮かぶのはあいつの笑顔ばかりだった。
神田 「ふん・・・。」
らしくもないことなどせず,今は次の任務のことだけ考えてればいい。
割り切るように再び目を閉じ,汽車がとまるのを待つことにした。
・・・そう,あいつは死んだ。
だから,今目の前にいる奴は,あいつじゃない。
__もう何回目になるのか。
自分にそう言い聞かせていないと,冷静さを掻いてしまいそうだった。
お知らせという名の謝罪です・・・→←お久しぶりでございます!!(2月16日)
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姫いちご - はじめまして姫いちごです。初コメ失礼します。とてもいい作品でした。私はディーグレイマンの中で一番神田が好きです。続きを楽しみにしています。(*^-^*コメ、長くてすみません。ありがとうございました!! (2016年4月17日 19時) (レス) id: c97e5601f8 (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - 初コメ失礼します。一気読みさせていただきました!!この作品に出会ってさらにdグレが好きになりました!!いつまでも待ってます^o^ (2016年4月12日 17時) (レス) id: 393c27509e (このIDを非表示/違反報告)
めぐ♪(プロフ) - 最初から読ませていただきました!!更新頑張ってください!!楽しみにしています!(^^♪ (2016年3月7日 6時) (レス) id: a48000af0d (このIDを非表示/違反報告)
みみ(プロフ) - お久しぶりです(^^)Dグレアニメ再開しますね!無理せず更新頑張って下さい^o^ (2015年12月26日 20時) (レス) id: 3e6b0e0f53 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜(プロフ) - 更新お待ちしてます。私も受験生 (2015年12月23日 16時) (レス) id: e4de09b28a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:莱羅 | 作成日時:2012年6月21日 20時