Ｄグレ★ 闇色に染まる私・あいつとの記憶 四

第78夜　沈めた心 ページ20

＿＿ずるり、ずるりと、闇に引きずられていく感覚。
何も見えず、耳の奥ではずっと誰かの憎しみの声がいくつも重なって聞こえていた。

いや・・・。
ごめんなさい・・・ごめんなさいごめんなさい・・・！

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿『許さない・・・・。』


A 「っ・・・！！」

ぱっと目を開け、Aは今初めて息をしたかのように荒い呼吸をしばらく繰り返した。
目線だけ横に移動させれば、小さな窓から日が昇り始めているのがわずかに見える。

A 「夢・・・。」

口でそう呟くことで、ようやく安心感を得たように、Aはほっと息をつく。
しかし、先程の夢の内容が現実のことではないと割り切ることはできず、気持ちは
まったく晴れなかった。

・・・これでもう、何度目なんだろう？
あの夢を見るのは。
場面は違えど、根本的な内容は変わってない。

額に張り付いた髪を掻き上げながら、Aはゆっくりと体を起こした。

A 「・・・わかってる・・・わかってるよ・・・。」

誰かに弁解するように、震えた声でそう呟くA。
自分以外誰もいない部屋だというのに、その目は確かに、自分の前にいる誰かに
向けられていた。

さっきのは戒めだ・・・私は、1人だけ楽しい思いをしちゃいけないのに・・・。
他人とは極力関わらず、残された時間を1人で生きていく、そう決めたのに。

優しくされると、明るい笑顔で話しかけられると、どうしても決意が揺らいでしまう。
深く沈めなければらない感情が、勝手に表に出てしまうんだ。

A 「こんなんじゃ・・・ダメだよね・・・。」

口元に小さく笑みを浮かべ、1度大きく息を吸い込んだ後、Aは目を閉じた。
暗闇に包まれながら、次は耳に入ってくる音を無視し、その次にわずかに漂ってくる朝露の
匂い、ベッドの柔らかな感覚も1つずつ除外していく。

世界がだんだんと遠くなり、Aの心は深く暗いところまで降りていった。
冷たくて心地よい、しかし、どこかさびしさが漂う闇の中。

再び目を開けたAは、しばらく自分の手のひらを見つめた後、立ち上がり、枕元に
置いておいた団服に着替え始めた。
着ていたワイシャツを脱ぐ際、胸元でシャラリと何かが揺れる。

それを見てわずかに瞳が揺れたが、Aはすぐにそれを隠すように別の服を羽織り
最後に短剣を腰のホルダーへ入れる。

＿＿正面を見るAの目は、どこか冷え切っており、暗い色を宿していた。

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