第八幕。彼女と夫婦刀のように。 ページ41
「落ち着かない、落ち着かないわ。」
太刀があるべき左腰を摩り、Aが何度目かわからぬ溜息を吐きました。
刀と服を遥香に預け、Aは検査着のまま三日月に伴われて元の部屋へと戻ってきました。
三日月は大きなソファーの上に座り、自分の膝の上にAを乗せると再び確かめるようにAを背後から抱き締めました。
「俺は触りやすくていいと思うんだがな。」
片手でAの腰を抱き、もう片手で髪を梳く三日月は楽しそうに左腰に手を滑らせていました。
「擽ったいわ……この検査着、布も薄くて落ち着かないのよ。」
スルリと脇腹を撫で上げた手を思わず振り払いそうになりましたが寸前のところで思い留まります。
「ちゃんと言い付けは守れているようだな。」
偉い偉いとAの旋毛に唇を落とし、三日月はソファーから立ち上がりました。
「Aが俺のところに来たら贈ろうと思っていたものがあるんだ。」
クローゼットの中には緋色の服や髪飾りが所狭しと並んでいました。
その中の一つを取り出して三日月はAを着替えさせ始めました。
「着飾ったりは苦手だったんじゃないの？」
「Aに着せようと思ってな、練習した。」
手際良く着替えが終え、今度はドレッサーにAを座らせて金色の椿を髪に飾りました。
「……すごい、三日月と揃いになっているのね。」
赤い狩衣に黒い椿の刀紋、髪飾りも三日月と対になるような位置に飾られていました。
「やはり、よく似合っている。」
鏡の中のAと並ぶように三日月は屈みます。
Aの艶やかな黒髪と柔らかな緋色の瞳がより引き立つような色合いになっていて三日月と並ぶと本当に自分が対になるよう作られた者だと錯覚してしまいそうなくらい良くできていました。
「主がな、Aと俺の為にと作ってくれた。」
髪飾りの房の部分には大小の鈴が連なっていて触れるとシャラシャラと軽やかな音を奏でました。
「凄く綺麗だ……。」
「三日月ほどじゃないわ。」
「昔からAは謙虚過ぎだ。俺が嫁に乞う程の女子が美しくないはずがないだろう。」
「……三日月は買い被りすぎなのよ。」
「……くくっ、はっはっは！相変わらずだなぁ、一度焼けても性格は変わらなんだ。」
急にカラカラと笑い始めた三日月にAは目を丸くしました。
「なんだ、そんな笑い方も出来るんじゃない。」
「Aは笑わなくなったな。」
ここでは、よ。何も言わずAはそう？と曖昧に微笑むだけでした。
第九幕。彼女ともう一人の江雪左文字。→←第七幕。彼女の不運。
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菱神 昂(プロフ) - 特にリクエストはいただかなかったので、祭り会場は小ネタ置き場に改造いたします。 (2015年5月1日 20時) (
レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - 御礼祭リクエスト受付は本日21時からです。リクエストは必ずお知らせを熟読された上でお願いします。ある意味キーワードの代わりとなりますのでよろしくお願いいたします。著者。 (2015年4月30日 14時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - (3k猫*´∀`*){よきかな〜♪さん» コメントありがとうございます！この章から漸く本線が始まるなという感じです。今から更に盛り上がる筈ですのでこれからも椿切と本作をよろしくお願い致します！ (2015年4月9日 23時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
(3k猫*´∀`*){よきかな〜♪ - お〜！だんだん話が盛り上がってきましたね！更新頑張ってください！ (2015年4月9日 19時) (レス) id: fdc932d927 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菱神 昂 | 作成日時：2015年3月6日 23時
