第五幕。彼女ともう一人の三日月宗近。 ページ38
Aを抱き上げたまま一向に下ろす気配のない三日月を遥香は窘めようとするどころか好きになさいなと微笑み、滞在中Aが泊まる部屋に案内すると歩き始めます。
遥香の言葉に三日月は満足げに頷くとその後に続きました。
「三日月、いい加減下ろさない？」
「嫌だ。」
「……そ。」
有無を言わさぬような圧力でした。
「ふふ、ごめんなさいねAちゃん、ここにいる間だけでいいからずっと彼と一緒にいてもらってもよろしいかしら？彼、貴女がいるととても安定しているから。」
「はぁ……こちらはお世話になる身ですから、遥香さんが望むのであれば……」
安定しているって……どういうこと？
Aを抱き上げてからは彼方の本丸の三日月と同じような穏やかさで微笑みを湛える此方の三日月に今は狂気のようなモノは一切感じられずAはあれは気の所為だったかと首を傾げました。
深紅の絨毯が敷き詰められた廊下は長く、途中何度も曲がったり登ったりを繰り返して大きな両開きの扉の前で漸く遥香は足を止め、扉と向かい合わせに立つとピーッという電子音のあと扉が開きました。
「生体認証、ですか？」
「ここはどの扉を開けるのにも生体認証が必ず必要ですの。管理官という仕事上、機密保護は義務……Aちゃんには申し訳ないのですけれど滞在中でも貴女を登録できないの、理解して下さる？」
「ええ、問題ありません。」
そもそも出歩こうにも三日月がAを自分とぴったりとくっ付けるように抱いて歩いたので途中何があるかもAにはよく見えませんでした。
検査の準備があるからと言い残し遥香はどこかへ行ってしまいました。
二人きりになり、三日月はAをベッドに下ろすと再び強く抱き締め堰を切ったように涙を流し始めました。
「A……逢いたかった……もう、逢えぬかと……っ！」
「……三日月……知っていたの？」
「三十年前、お前が焼け失われたと聞いた時から俺は後悔し続けた！待つことしかできなかったこの身を呪い、お前を救えなかったこの身を呪った！今までずっと……！」
三日月の口から溢れたのは慟哭でした。
「長く生きた分、タカを括っていた……お前が壊れることなど無いだろうと……いつかまた会えるだろうと。」
Aは黙って目を閉じ、三日月の背をそっと撫でました。
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菱神 昂(プロフ) - 特にリクエストはいただかなかったので、祭り会場は小ネタ置き場に改造いたします。 (2015年5月1日 20時) (
レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - 御礼祭リクエスト受付は本日21時からです。リクエストは必ずお知らせを熟読された上でお願いします。ある意味キーワードの代わりとなりますのでよろしくお願いいたします。著者。 (2015年4月30日 14時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
菱神 昂(プロフ) - (3k猫*´∀`*){よきかな〜♪さん» コメントありがとうございます！この章から漸く本線が始まるなという感じです。今から更に盛り上がる筈ですのでこれからも椿切と本作をよろしくお願い致します！ (2015年4月9日 23時) (レス) id: 4fb92bb402 (このIDを非表示/違反報告)
(3k猫*´∀`*){よきかな〜♪ - お〜！だんだん話が盛り上がってきましたね！更新頑張ってください！ (2015年4月9日 19時) (レス) id: fdc932d927 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菱神 昂 | 作成日時：2015年3月6日 23時
