2話 ページ3
あぁ、思っていた通りだ
この人は
栄さんは、侘助のことをとても大切にしている
彼は厄介払いされていると言っていたけど、きっと本心ではないのだろう
だって、こんなにも暖かい目を向けられてそう思うはずがないんだから
「エリンさんは、これから用事でもあるのかい?」
「いえ、こちらに来る前に用事は済ませましたので、あとは少し観光をして帰ろうかな、と」
「そうかい」
栄さんは、なら!と目を輝かせて言う
「うちに泊まっていかないかい?」
――――――
「エリンさん、ここに着替えとタオル置いておきますね」
「すみません、ありがとうございます!」
髪についた泡を洗い流し長い髪をまとめる
久しぶりだなぁ、お風呂に浸かるの......
「はふぅ......なんだろう、日本のお風呂凄く落ち着く...」
これなら、何時間でも入ってられるかもしれない
最近は研究所に引き篭もりっぱなしだったし、お風呂入ってもシャワーだけだったし...
これは、役得だなぁ
流石に何時間も、は迷惑だろうから5分ほど湯船に浸かって上がる
着替えてから長い廊下を歩いていると角から栄さんが出てくる
「エリンさん、少し話をしないかい?」
――――――
「すまないね、あの子のことが聞きたくなって」
「いえ。何から話しましょうか...」
話というのはやはり侘助のことだった
約9年も帰っていないのだから当然だろう
何から話そうか......侘助がこの前鳩に糞を落とされたこと、お湯を入れたカップラーメンを2時間程放置して膨張した麺を食べて噴き出したこと...話すことはつきなさそうだ
あれこれを思い出して笑ってしまう
すると、栄さんと目が合う
「エリンさんは、息子のことを大事に思ってくれてるんだね」
「えっ?......あー、そう、ですね」
「元々私が彼の頭脳に目をつけて前の研究所から......引っこ抜いてきたので...」
あ、目をつけて、はダメだっただろうか
いや、でも他になんと言えばいいのか......こういう時にもっと日本語を習っておくべきだったと後悔する
ウンウンと悩んでいる私を見て栄さんは、ははは、と笑う
驚いて栄さんを見ると私を優しい目で見ていた
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作者名:おふとぅん信者 | 作成日時:2020年3月13日 14時