3158.【3】 ページ8
［翔にぃside］
「チクッとするよ」
潤「…ん」
検査前の準備の点滴を終えて、調整してから
俺も検査台に腰掛ける。
「不安？」
潤「ん、少しね。でも、大丈夫」
やっぱり強がる末っ子に…
「…不安だろ？」
そっと肩に手を当てたら、俯いた後に小さく頷いて
「…ん」って。
少し体を震わせながら、やっと声を絞り出したような
潤の姿。
もっと早く聞き出してやればよかったかな…
「なにが不安？…痛み？」
潤「…ん」
「検査の結果のことも不安だよな…？」
潤「…ん」
でもその後は聞き出そうとしても「…ん」とか
「んー…」とかハッキリしない反応ばかりが返って
くるようになって。
俯いた顔を覗き込もうとすれば「…大丈夫」って
目を逸らされる。
一度強がってしまうと、なかなか上手く甘えることが
できない奴だからな…
ほんとは甘えん坊で繊細なくせに、それを隠そうと
する。
それが、成長している証拠でもあるんだけどね。
「…潤？」
潤「…ん」
「こっち見て？」
潤「…んん」
「…笑」
顔を上げてくれないから、検査台に腰掛けるのを
やめて、潤の前に屈む。
下から顔を覗き込んだら、ちょっと膨れて目を
逸らそうとしてきたけど…
「…潤？」
潤「…ん」
両手を握って呼びかけたら、やっと目が合った。
いつもより多めに水分を含んだ瞳。
泣いてはいないけど、不安そうにユラユラと
揺れているのが分かる。
「急にさ、検査だなんて言われて恐いよな…？」
潤「…」
「…ん？…恐くない？」
潤「…わい…」
黙りではなく、潤の言葉を聞きたくて促したら
「こわい」って小さく教えてくれた。
「いくら検査の説明受けたって、初めてのことは
痛みの心配もあるし、緊張もする」
潤「…ん」
「誰だってそうなんだから、それで大丈夫なんだ
からな？」
潤「…ん」
「無理して我慢しなくっていい」
潤「…ん…っ、んっ…」
「ん、…おいで」
肩を震わせて涙を零し始めたから、そっと立ち
上がって抱き締める。
俺のお腹に顔をグリグリ埋めて泣いている。
なんか可愛い。笑
途中、チラッと先輩が顔を出してくれて今の潤の
様子を見て「20分なら遅らせられる」って
伝えてくれた。
有り難い。
少しでも潤の気持ちに寄り添って、不安な気持ちを
小さくした上で検査を進めていきたいからね。
潤「…っ、んっ…んくっ…」
「ん、大丈夫、大丈夫…」
背中をさすりながら声をかけて、落ち着くのを待つ。
もう少し話せるかな。
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作者名：空
| 作成日時：2019年6月7日 19時
