2990.【5】 ページ40
［先輩side］
ピンポーン…
翔くんの家のインターホンを鳴らす。
智「わざわざ、ありがとうございます」
「…どう？」
智「大丈夫そうです」
智くんに迎い入れてもらってリビングへ。
「智にぃ…」って言いながら寄ってきた翔くんの
顔色は思っていたより悪くないし、活気もありそう。
昼前の発作は想定外だったから、今日は遠慮しようか
とも思ったんだ。
でも智くんが「だからこそ来てください」って
言ってくれて。
翔「先輩、こんにちは…すみません…」
「いや、会いたかったから」
翔「…ありがとうございます」
照れて俯いた翔くんの頭を、智くんが「よかったね」
って撫でてあげてる。
これだけの安心感があれば、時期に回復する
だろうな…って安心する自分がいる。
翔「ピザ焼いたのでよかったら…」
先「ん、頂くね。ありがとう」
「今日は少し暑いから」って智くんがアイスコーヒー
を用意してくれて、焼いてもらったピザと一緒に
頂く。
今日の目的は、翔くんに会いたかっただけだから
今後の話とか、カウンセリングの話とかは何も
しない。
ただ、どうでもいいことを3人で話して笑いあえれば
それで十分。
「デスクワーク送るから、できそうな時頼むな？」
翔「はい」
最後に仕事の依頼もして。笑
今日はこれでおしまい。
［翔にぃside］
先輩はそれから何度も様子を見に来てくれた。
カーテンを開けていられた時も気が付いてくれて。
先「お、窓開いてるんだ」
「…はい」
少しだけ窓を開けられた日も、もちろん気が付いて
くれたんだ。
「…っ、ん…はぁ、はぁ…っ、んっ…」
先「ゆっくりで、いいから…」
智「…大丈夫」
「…っ、んっ…はぁ…はぁ…」
先「翔くん、大丈夫…ゆっくり…」
救急車のサイレンが聴こえてしまって、発作を
起こした時も傍にいてくれた。
電話でも報告するようにしてて…
『今日、兄と一緒に近くのスーパーに買い物に
行けたんです』
『今日は、家の前を救急車が通っても発作が
起きませんでした』
こんな感じで、進歩したことを報告。
もちろん『また発作起こしちゃって…窓、また閉めて
しまいました…』
進歩できなかったことも報告。
その度に先輩は『よかったな』とか『ゆっくりで
いいよ』って言葉をくれる。
先輩と智にぃと弟達のお陰で、また前を向けた。
『発作が起きるかもしれないから…』って恐くて
避けていた場所に、足を向けられるようになった。
『恐くない』
少しずつ、そう思える。
END
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作者名：空
| 作成日時：2018年9月6日 18時
