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［先輩side］
医局にいたら、
いきなりスタッフが飛び込んできて「翔先生の
弟の雅紀さんが運ばれてきます」って。
慌てて救急口まで向かう。
「…何があった？」
ストレッチャーで運ばれてきた雅紀くんの
頭を覆ったガーゼは真っ赤に染まってる…
救急隊の人から「車との接触」って言葉が。
もちろん驚いたけれども…
智「…っ、んくっ、雅紀…」
翔「…とにぃ、大丈夫、だか、ら…」
さらに驚いたのは、ストレッチャーに縋ろうとする
2人の兄の姿。
邪魔になっていることにも気付かず…
「ちょっと、こっちおいで。お前ら怪我は？」
智「…っ、まさ、き！」
「翔くん？怪我してない？」
翔「…っ、大丈夫、です」
智くんはパニック気味に「まさき」って叫ぶ
ばかりで。
翔くんは必死に冷静になろうとしてるけど
呼吸も速いし、顔色が悪い。
「2人はこっちでもらう」
医「分かりました」
駆け付けた他の医師に雅紀くんを託して、
智くんと翔くんは救急口近くの処置室へ。
雅紀くんと離されたことで、さらにパニックになる
智くんに「処置中だから大丈夫」「今は会えない」
って伝えながら、落ち着くのを待つ。
看「使いますか？」
「ありがとう」
看護師が持ってきたホットタオルを渡したら
顔を埋めて、深呼吸を繰り返し始めた。
「智くん、大丈夫？」
智「…ん」
コクン…と頷くのを待って「大事な弟診るから
待っててな」って伝えたら、今度はコクコクと
しっかり頷いてくれた。
「…翔くん、苦しいだろ？智くんはもう大丈夫
だから、今度はお前の番」
翔「…っん、…ん、…っ…」
「…翔くん、深呼吸は？」
翔「…っ、…ん、ん…」
速い呼吸が続いたせいで酸素が足りてない。
「…ゆっくり」
翔「…っ、ん…、さと、にぃ、とまさ、き…」
「ん、分かってる。心配なんだもんな…」
何も知らない状況で『大丈夫だ』なんて言えない。
だけど…
「俺は信じるよ」
翔「…っ、ん、ん…」
いつも翔くんは一生懸命に信じようと
してるから…
「…翔くんは？」
翔「…ん、はい、…んじま、す」
「ん、よし。じゃあ、まずは深呼吸な」
冷たくなった手を握りながら、ゆっくり背中を
さすって深呼吸を促していたら、だんだんと
落ち着いてきた。
びしょ濡れになった服は、洗濯と乾燥機を。
バスタオルに身を包んだ2人は、事故の経緯を
話してくれた。
「…いくか」
1時間くらい経ってから、雅紀くんの処置が
終わってICUに運んだと連絡がきた…
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作者名：空
| 作成日時：2017年9月3日 16時
