2693.【2】 ページ43
［先輩side］
あいつとは同期の頃
何度もやり合った。
もともと性格が俺とは合わないんだろーな。笑
結局、あいつは昇進の道を選んで、大学病院や
海外の病院へと転々として。
今となっては、俺なんかとは比べものにならない
立派な医師になった。
はっきり言って、あいつはこの病院には合わない。
だけど、怪我で抜けた医師がいて人手不足で
困っていたから、ヘルプにきてくれて感謝は
してる。
数ヶ月っていう悪条件にも快くOKを出したと
聞いているし。
だけど、俺の大事な翔くんを悩ませるのには
ちょっと困ってるけどね、正直。笑
翔くんは本当に真面目だし、自分の意見を
しっかり持っている人だから…
例え、上司からの命令であっても自分の意見を
ひょいひょいと曲げることはしない。
だからこそ、上司からは信頼されて頼りに
されるし、後輩からは慕われる。
そうやって、この病院で関係を築いてきた医師が
翔くんだから。
翔くんのことをきちんと知るまでは、生意気だとか
従わない面倒な奴と思う人もいるだろう。
たぶん、あいつも今はそう思ってる。
でも、時間が経てば分かってもらえるはずなんだ。
だから翔くんには、今の状況に負けずに翔くん
らしさを貫いて欲しいと思っていて…
「普通の検査方法でいいのか？」
翔「はい。話したら、挑戦してみるって…」
「翔先生が言うなら。って？」
翔「…はい」
「それでいいのか？」
翔「…はい」
いつもはしっかり目を見て話す翔くんが
今日は俯き加減。
「翔くんはその方が良いと思った？」
翔「はい、俺の判断です…」
1年前まで入院していた胃がんの患者さん。
翔くんが担当していたんだけど、恐怖症を
患っていて胃カメラが受けられなくて。
いつも鎮静かけて眠らせて検査をしていたんだ。
それが今回は眠らせずに検査する方法で
オーダーが出ていたから。
いや、チェックしたわけじゃないんだよ？笑
たまたま目に留まって気になったから聞いてみた
だけ。
あいつに「普通に受けるように話してみろ」って
言われたんだろうけど。
その後も問い詰めたけど、翔くんは「言われた
から」って言葉は一度も口にしなかった。
あくまでも『自分の判断』だと。
まぁね、翔くんはあいつに言われたことだろうと、
自分が説得して話が進んだのなら、それはもう
自分の責任。
そういう奴だから。
「無事に終わるといいな。患者さんも
自信つくしな」
翔「はい…」
いろんな意味で何事もない事を祈ったけれど…
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作者名：空
| 作成日時：2017年9月3日 16時
