2565.【5】 ページ15
［翔にぃside］
夢乃とお別れをする時…
腕にそっと触れて思い出していた。
2人で話をした、あの時のこと…
夢「あのね、翔先生。内緒にしてくれる？」
「ん、何？約束は守るよ」
夢「私ね、和くんのこと好き」
思わず俺は「え、どのへんが？笑」って返して
しまった。
だって和は自分の気持ちに素直にならずに
夢乃に対しても「お前」とか「おい、バカ」とか。
冷たいことも言っていたから。
だけど夢乃は俺の問い掛けに対して「和くんは
私の夢、応援してくれたから」って言ったんだ。
「看護師になりたい」って口にした時、大抵みんな
「まずは夢乃が元気にならないとね」って
言葉を返してきたって。
そういうことを一言も言わずに「夢乃にはピッタリ
なんじゃねーの」って言ってくれたことが
嬉しかったんだって。
夢乃はキラキラした笑顔で「和くんの嘘のない
一言が勇気をくれた」って俺に教えてくれた。
夢「好きって言ったこと内緒ね？」
「ん、もちろん。約束な」
夢「ふふ ♪ ありがとう、翔先生」
あの時の夢乃の、照れたような…でも本当に
嬉しそうな笑顔が忘れられない。
今ならいいよな？…和に話しても。
夢乃の勇気と優しさ、分けてやってくれるか…？
［潤side］
和は俺が話をした数日後「潤、ありがと…」って
言いにきて。
それから少しずつ自暴自棄から抜け出し始めた。
だけどまだまだ悲しみが大きくて…
そんな時、翔にぃがリビングにみんなを集めて、
夢乃ちゃんと話したことを教えてくれた。
和のこと「好き」って言っていたなんて…
「和くんは優しい」とも言っていたんだって。
翔「それから、これ。夢乃の両親から預かった」
和「…っ、んっ、ん…」
翔「亡くなる1ヶ月くらい前、沖縄に家族旅行…
そこで拾った貝殻で作ったらしいよ」
和「…っ、俺、に？」
翔「ん、和に。好きな色は黄色だって…
お前が教えたんだろ？」
和「…っ、んっ、んくっ…うん…」
黄色ベースの写真立てに、貝殻の飾り付け。
写真は中庭で撮ったやつかな。
2人とも良い顔してる…
「…っ、…っん、んくっ…」
俺まで涙が溢れて止まらない。
肩を抱いてくれた翔にぃに縋って泣く…
智「かず…夢乃ちゃんの分まで強く生きよう？」
和「…っ、んっ、ん…」
雅にぃが和をギュッと抱き締める。
その胸の中で、和は智にぃの言葉にコクコクと
頷いた。
よかった…
「…っ、んっ…」
翔「よしよし…潤もありがとな」
これで一歩…進める。
END
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作者名：空
| 作成日時：2017年6月14日 18時
