2010.【消えた雅にぃの声】 ページ10
［雅にぃside］
「申し訳ありません…」
こうして頭を下げるのは何度目だろう。
先方からは「もう少し責任感のある人を
担当にしてくれ」って怒鳴られて…
園長先生には「家のことで何かあったか…？」って
心配掛けてしまって…
それだけでも辛かったのに、今日は後輩にも
ミスを背負わせてしまった。
俺がもっとしっかり確認してやれば防げたミス。
「申し訳ありません…」って頭を下げる後輩を
見るのは辛くって切ない…
それでも園長先生は「先輩としての責任の大切さ
勉強になっただろ？次に繋げてくれたら
それでいい」って言ってくれた。
後輩も「次は同じ失敗しないように気を付けます」
って明るく振舞ってる。
でも…全部、俺の責任じゃん。
しっかりやらなきゃって思えば思う程、空回りして
上手くいかない。
はぁ〜…
出てくるのは溜め息ばっかり。
自分でも嫌になるよ。
やっと週末だ…
俺は寄り道せずに足早に家へと急いだ。
家に帰れば自分の居場所がある気がした…
みんなの声が聞きたい。
俺も笑いたい。
［翔にぃside］
ここ、1.2週間。
雅紀が疲れて帰ってくることが多い気がする。
何となく感じる雅紀のストレス。
ぎこちない笑顔は「助けて」って言っている様な
気がするんだ…
「まさー？呑もうぜ」
夕飯前、リビングでゲームしている双子を
カウンターからボーッと眺めていた雅紀。
その隣に座って、缶ビールを差し出す。
智にぃがササッと枝豆を解凍してくれたから
それをお供にね。笑
夕食を作りながらの智にぃも含めて、少しだけ
話をしておきたいな…って思ったんだ。
「…仕事、何かあった？」
雅「…っえ？」
「はは！マヌケな顔！笑」
智「ふふ。」
始めは「んーん。何にもないよ」「ちょっと疲れた
だけ」って誤魔化して逃げ道を進んでいた雅紀。
でもビールをチビチビ飲みながら、少しずつ
話をしてくれるようになって…
「仕事でさ…何度も失敗しちゃうんだ…」って。
雅「命を預かってる、大事な仕事なのに…
駄目だよね。おれ…向いてないのかな…」
黒目がちなその目に、次第に涙が溜まっていく…
「まさ…？失敗は誰だってする。俺だってする。
いくら気を付けていても失敗する時って、
あるんだと思う…」
雅「でも…俺、何度もだもん…
バカだから…駄目なんだよ、きっと…
命を預かるような大事な仕事はさ…」
ポロポロと涙が零れ始めた雅紀。
ゲームをしていた双子も気が付いて寄ってきて
心配そうな顔をしてる。
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作者名：空
| 作成日時：2015年10月17日 13時
