1448.【2】 ページ48
［和side］
救「名前、教えて下さい」
「…っ、…と、…」
救「ん？」
バタバタと救急車から降りてきた救急隊の
人達を前にして、俺の心臓はバクバク…
それに加えて身動き一つしない智にぃが
心配で不安で仕方なくて…
質問にも上手く答えられなくて、俺は記録を
付けておいた紙を差し出す。
倒れた時間と状況を書いておいたんだ。
救「ありがとう」
受け取ってくれた救急隊の人が優しく笑って
「あれ？和也くん？」って。
頷いたら「前に翔先生にお世話になって」って
教えてくれた。
それに、俺が倒れた時に運んでくれた縁も
あるらしい。
ちょっとホッとした俺は、その救急隊に
智にぃの名前を伝えることができた。
パパッと処置をしてもらった智にぃは
救急車に乗せられる。
救「和也くんも乗って？」
「…っ、んっ…」
救急車の前で手を引かれて、無意識に足を
突っ張ってしまう俺…
救「大丈夫。智さんの傍にいてあげて？」
「…っ、はい…」
震える足を前に進めたら救急隊の人が支えて
くれて。
智にぃが寝かされたストレッチャーの隣に
俺を座らせてくれた。
「…っ、さと、にぃ…」
手を握って声を掛けるけど返事はない…
救「薬入れてあげるからね。ちょっとこっちに
きててくれる？」
俺が突端恐怖症だってことも覚えててくれた
みたい。
点滴をする前に視界を遮ってくれて、足元に
移動させてくれた。
だけど、俺の不安はピークに達していて…
「…め、…したら、だめ…」
救急隊の人達を困らせる言葉が出てしまう。
救「大丈夫。恐いことじゃないよ？」
「…っ、…めんなさ、い」
智にぃを助けようとしてくれてるのに
「だめ」なんて言葉。
いつも慰めてくれる、にぃ達も潤も誰もいない
状況で気持ちの整理が上手くできない。
救「ほら、もう終わった。こっちに、おいで」
優しい人だなぁ…
きっと俺が救急車の中でパニックになってる時も
優しくしてくれたんだろうな…ってそう思った。
救「翔先生と連絡とれてるからね。
入り口で待っててくれるって。」
コクンと頷いたら「はい」って智にぃの手を
握らせてくれた。
「さとにぃ…」
涙が溢れそうになる…
でも、まだ泣かない。
今、辛いのは俺じゃなくて智にぃだから。
俺が泣いたら智にぃが心配しちゃうから。
翔にぃに「ちゃんと連れてきたよ」って
智にぃを託すまで強くいようって決めたんだ…
「さとにぃ、もう少し頑張って…」
俺は手を握り直して、そっと祈る…
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作者名：空
| 作成日時：2014年6月15日 16時
