1006.【6】 ページ6
［翔にぃside］
「和！引っ張んなって」
和「…らない、とって！」
「これなきゃ検査できねーの！」
和「…んさ、しなくて、いい！」
脳のMRIを撮るって話をして、採血して
そのまま点滴で薬を入れたんだけど。
和は検査が嫌なのか点滴を引っ張って
怒って主張してくる。
手の甲に刺せば良かった…
言い聞かせれば何とかなると思ったんだけど、
その前に俺のイライラが募る。
脳外科の先生にも散々、怒鳴って怒って…
今の和は恐怖とか不安よりも我儘が勝ってる。
でも、それがどのタイミングで爆発するか
分からないから、難しいところ…
「かーず…？聞いて？」
和「…るさいっ、離せっ！」
点滴を抜かないように智にぃが抑えてるから
さらに機嫌が悪くて。
だけど、優しく優しく、声を掛けてみる。
「嫌なの分かるけど、これだけは頑張らないと
なんだよ？な？分かるよな…」
和「…」
「もし恐くて嫌なら、眠ってる間にも
できるよ？そうしてみる？」
和「…んーん」
「じゃあ、頑張って終わらせよう？」
声は出さないけどコクコクって頷いたから
智にぃと合図して抑制をやめてみる。
「車椅子で移動しよっか。」
和「…」
「ん？歩いて行きたい？」
和「やんないっ！」
「…！おいっ！」
油断したほんの一瞬…
点滴に手をのばした和はそのまま勢いよく
引っ張った。
すぐにそのままベッドに抑えつけて
固定し直す。
幸い、抜けるところまでいかなかったし
傷も付かずに済んだ…
［智にぃside］
かなり無理矢理にベッドに寝かせて固定して
進む処置。
和はギャーギャー騒いで怒ってる。
翔「和？」
和「ん〜！」
翔のことをドンッて押して睨んでる和。
俺はベッドに座って自由になってる右手を
抑えておく。
次抜いたら刺し直しになるかもだからね…
刺し直しは避けてやりたい。
翔が何を言っても首を振って「ん〜」って
怒ってる。
翔「和？ちゃんと聞いて？」
和「やだ！帰るから抜いて！」
翔「…」
無言で睨んだ翔は一旦、点滴を止めて、
厳しい顔つきで和の正面に座った。
翔「じゃあ、どうしたいの？」
和「…」
翔「答えなさい！和はどうしてもらうことが
望みなの？」
和「…」
翔は和の頭をバシッと叩いて「抜きたいなら
抜けよ！」「帰りたいなら、帰れよ！」って
怒鳴った。
和は目に涙をいっぱい溜めて俯いた後
「怒ったら、嫌だ」って叫んで
俺に抱きついてきた。
「…」
黙って抱きしめて落ち着かせる…
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作者名：空
| 作成日時：2013年11月10日 23時
