1040.【40】 ページ40
［翔にぃside］
脳外科の先生が
貸してくれたMRIのデータ。
医局で一人、何度も見つめて…
手術以外の方法はないものかとパソコンに
縋った。
開頭して取り除くのがベストな方法なのは
分かってる…
でも、何とかしてやりたいと思ってしまうのは
家族だからなのかな。
もう泣かせたくない…
恐い思いをさせたくない…
俺がこんなに後ろ向きで、それが和に伝わって
いるんじゃないか。
そう思ったら申し訳なかった…
くりくり坊主にしてもらった日、和は「先生にも
見せる〜」って笑って「澤せんせ〜」って
会いにいったんだ。
少なくともあの時、和は開頭手術に対して
今より前向きだった…
まずは俺が、手術に和を託す気持ちを持とう。
「治すんだ」って強い気持ちを持とう。
そう思ってコーヒー飲んで一息…
ふと、和の気配を感じた気がした。
一度気になったら、どんどん気になって…
病室を覗いてスッキリしようと思って
医局のドアを開けたんだ。
そしたら、ドアの横で俯いてポロポロ泣いてる
和がいて。
状況を掴むまで一瞬フリーズ…笑
「…どした？…おいで…」
小さな肩がカタカタ震えて泣いている…
ギュッとしたら潰れてしまいそうで。
俺の腕の中で大泣きしながら「きてくれると
思った…」って呟いて…
「翔にぃなら見つけてくれると思った…」って。
和「…いに、きた、の…」
「ん、そっか…。
すぐ気が付けなくてごめんな…」
もう一度ギュッとして顔を上げたら
智にぃと目が合って…
ついててくれたんだね…
そしたら柔らかく笑って「戻ってるね」って
口を動かして。
俺はその背中に向かって「ありがとう…」って
呟いた。
和「…ょ、にぃに、…ねがい、…る」
「ん、聞こうね…」
呼吸が速くなってるから、背中に力を入れて
ゆっくりしっかりさすってやる。
少し落ち着かないと話はできそうにないから…
和「…っと、しょ、にぃと…たい…」
もう十分なくらい密着してるのに、さらに俺に
縋ってくる和は、いつもの何倍も幼く感じて…
「かず…？星、見にいこっか…？」
和「…？」
「今夜は綺麗なんだ…な？」
実は、日付が替わる頃、俺は屋上で星を眺めて
お願いごとをしてたんだ…
「和がこれ以上、苦しみませんように。」
「和の心が壊れてしまいませんように。」
よく晴れた夜空の星は、すごく綺麗で
キラキラして「任せてください…」って
返事をしてくれてるみたいだった。
だから、和にも見せてやりたい…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 518人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空
| 作成日時：2013年11月10日 23時
