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［智にぃside］
口内炎は1つでも
痛いのに…
それが口中にあるっていうんだから
痛いってレベルじゃないだろうね。
和が薬を嫌がる気持ちも分かるけど、
翔が無理矢理にでも飲ませるなら
俺はそれをサポートするまで。
その代わり、いくらだって他で甘やかして
やるって約束する…
「かずー？出したらもう1回だからな」
怒って薬を吐き出そうとした和の口を
手で抑えた翔は「飲みなさい」って
厳しい一言…
翔がこれを言うのに、どれだけ心を痛めている
のか俺らには分かる。
だから和も、涙目になりながらゴクンと
飲み込んでくれた。
翔「はい、おしまい」
ここで口直しでも出来たらいいんだけど
今はそれすら苦痛に繋がるから。
今の和には、どんなご褒美を提供して
あげられるのか俺らなりに考えたんだ。
翔「さて、どこにいこうか？」
その結果がこれ。
一つ頑張れたら『好きな所に10分の散歩』笑
和「…かにわ」
翔「ん？中庭がいいの？」
和「…うん」
どんなに嫌なことされてイライラしてても
この10分で上手に切り替えができる和。
「抑えんな！って言った…」
「やんな！って言った…」
そう言って拗ねてても病室に戻る頃には
「楽しかったね〜」って笑うんだ。
たった10分、それも車椅子での散歩なのに
和は「ありがと〜」って。
満足そうな顔をして寝息を立て始めた…
翔「ごめんな〜…厳しくして…」
今にも泣き出しそうな辛そうな翔の声が
寝息に混じって聞こえてくる。
翔が苦しいのは分かってるよ？
でもさ…
「しょう…？見てごらん、和の顔…」
俺の声に、ゆっくり顔を上げた翔が「ふふ」って
小さく笑う。
翔が手を握ってあげたら、それが分かるみたいに
安心した顔になって眠ってる和。
「幸せそうじゃない…？」
翔「…うん」
「お前の愛情が届いてるからだよ…？」
翔「…うん」
安心しきってなきゃ、そんな寝顔見せないもん。
和はどんなに厳しくされても、嫌なことされても
翔への信頼は失わないから。
それはさ、厳しくされてマイナスでも
それ以上のプラスがあるってことでしょ？
翔「もう少しの辛抱だからな…」
和の頭をゆっくり撫でる大きな手。
受け止めきれない程の愛情で溢れてるその手。
翔が担当医になったことで和の心の傷は
確実に癒えつつある。
大好きなお兄ちゃんが先生だなんて、
幸せな環境なんだって思うよ？
だから「ありがとう、翔。」
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作者名：空
| 作成日時：2013年11月10日 23時
