39.【20】退院 ページ39
［翔にぃside］
意識を手放したままの
和を自宅に連れて帰ってきて
ベッドに寝せてやる。
この小さな体で沢山のことを
頑張っているんだと思うと
たまらなくなってギュッと抱きしめた…
しばらくして目を開けた和は
状況を掴めずキョロキョロしてる。
「かず、お家だよ。退院したよ？」
和「…お、うち…？」
「そうだよ。ただいまって。」
和は小さく笑って「…ただいま」って
呟いた。
和「智にぃのご飯おいしい！！」
病院では食べさせるのに苦労したのに
そんなの少しも感じさせない。
和は安心感からか、パクパク食べて
嬉しそうに笑っている。
智「喜んでもらえると俺も嬉しい」
久しぶりに5人で囲む食卓は笑顔で溢れる…
「かずー？風呂入ろうか？」
和「！！いいの？」
俺の提案にソファーからピョンと飛び上がって
走ってくる和。
「久しぶりだもんな。その代わり、にぃ達の
誰かと一緒な？熱も計ってから」
和「うん！！」
和は喜んで体温計を挟む。
病院では体温を計るだけで大泣きだったのに
自宅という環境のお蔭で
和は少しリラックスできているみたい…
和「にぃ見て？36.1℃！！いいでしょ？」
嬉しそうに体温計を見せてきた和の頭を
クシャクシャに撫でてやる。
和「翔にぃ、楽しいね！」
和はお風呂でもずっと、きゃっきゃっ騒いで
楽しそうだ…
和「ねぇ、背中洗って？」
少し痩せてしまった背中を洗って流して
やっていると、穿刺の痕が目に入った。
そういえば、胸にも同じような
穿刺の痕が2箇所あるんだよな…
あの検査の痕だ…
「かず、ちょっとこっち向いて？」
和「なーにー？」
俺に背中を洗ってもらいながら
シャンプーして髪の毛で遊んでいた和は
無邪気に振り返る。
楽しそうにしてる今なら、検査のこと少しなら
話してくれるんじゃないかって
思ったんだ…
「胸の傷、見せて？」
だけど、俺の考えが甘かったことを思い知る。
この一言に和は顔を引きつらせて
胸にのばした俺の手を払いのけた。
和「や…ない。なんも、ない…」
まずい…と思った時にはもう遅い…
完全に平常心を失った和は
俺から逃げるように後退りして泣き出した。
「かず、ごめん。おいで？」
俺までパニクるわけにはいかないから
穏やかに声を掛けたつもりだったんだけど…
和「…や。きず、ない…」
パニックを起こした和は、泡だらけの手で
顔を触ってしまった…
和「ぎゃー」
目にはシャンプーが入り
開けられなくなってしまった…
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月5日 8時
