21.【2】 ページ21
［雅にぃside］
可哀想で
見てられない…
脈をとるだけなのに、
和はこの世の終わりとでもいうように
暴れて泣き叫んでる。
翔にぃと智にぃに抑え込まれて…
それでも必死に体を捩って、
逃げようとしてる。
どこから、そんなに涙が出てくるの？って
不思議なくらい、涙は止まることなく頬を
流れていく…
先「はい、頑張りました」
固定の手から逃れた和は、
必死で俺のとこまできて、しがみ付いた…
「頑張ったね、おしまいだって。
えらい、えらい。」
何とか落ち着かせてやろうと
背中をポンポン叩いていたら
だんだん力が抜けてきた。
翔「雅紀？少し先生達と話したいから
院内連れて歩いてやってくれる？」
「うん、分かった」
翔「かず？泣いてたら皆ビックリするから。
な？雅紀と一緒にお散歩してきて？
ちゃんと歩けたら、ご褒美に屋上に
行っていいから」
和は翔にぃに涙を拭いてもらって
小さくコクンと頷いた。
雅「おいで、行こ？」
ピタッと背中にくっついてきた和を連れて
俺は入院病棟を、ゆっくり歩く。
雅「ねぇ、かず？入院しても前みたいに
一人じゃないんだよ？にぃ達も一緒に
泊まれるんだって。嬉しいね」
和「…えがいい」
家がいい…そりゃ、そうだよな。
俺は何とか説得出来ないものかと考えながら
個室がずらっと並ぶ病棟を往復した。
看「あら、こんにちは〜」
ここにいる看護師さん達は
みんな温かい笑顔で挨拶をしてくれる。
これなら、きっと和も少しずつ
慣れてくれるんじゃないかなって思える。
和「…まさ、にぃ？…じょういこ？」
「そうだね。あ、ジュース買って行こうか」
コクンと頷いた和を連れて自販の前まできた。
オレンジジュースを手にとった和は
嬉しそうに小さく笑ってくれた。
「冷たくて、美味しいね。」
和「うん、おいし…」
屋上でなら、少しだけリラックスできる様に
なってきた和。
芝生に寝転んで雲を見ながら
ポツポツ話し出した…
和「病院、置いてかないで…？
おれ、もう入院したくない…」
「…」
和「先生、怖い…治療も、嫌い…」
「…」
和「…いいこにする。家で良い子にする…」
「…」
和「…まさにぃ、へんじ、して…？」
「あ、うん…ごめんね。
でも、俺なんて言っていいか分かんない…
情けなくて、頼りない兄ちゃんでごめん」
和「…んーん。おれ、わがまま…」
俯いてポロポロ泣き出した和を目の前にして、
ただ抱きしめることしかできない自分が
無力で情けなかった…
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作者名：空
| 作成日時：2013年4月5日 8時
