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名前を呼ばれ思わず顔を上げ、額に感じた柔らかい感触に思わず動きが止まる。
「え？」
離れたトントンは先ほどまでの冷酷な顔をした悪魔ではなく、悪戯をしたような子供の顔をしていた。
トントンの赤い瞳は笑っていた。
「呪いは解いた。これでお別れや。俺もAさんの焼いたパンはほんまに好きやったで」
そう言って、扉に向かうトントンにAは、彼に口付けられた額を押さえながら言わずにはいられなかった。
「待って、トントン！あなたがここにいたければいてもいいのよ！私の焼いたパンが好きならいくらだって焼いてあげるわ！」
グルッペンの膝の上から叫ぶにはいささか説得力もない態勢だったが、それでも言わずにはいられなかった。
ピクリと肩をふるわせて立ち止まったトントンは、こちらを振りかえろうともせずに、その黒髪を軽く揺らす。
「いや。もう二度と会うことはないやろな。それに、これ以上邪魔をしたら今拘束してる悪魔に殺されかねんわ」
失礼するでと告げられ、扉は静かに閉じられた。
じっと扉を見つめていると、漸く身体にまわされていた腕が緩められる。
額を押さえていた腕を除けられると、苛立たしげにトントンと同じように口づけが落とされる。
「人のものに勝手に手を出すとは……。おまえも黙ってされるがままにしておくな」
「何を、言ってっ……」
先ほどからのグルッペンの態度は、Aの中では恋人にするそれと一緒で途端落ち着かなくなる。
身体に回された腕が緩んだのをいいことに、Aは膝の上から下りる。
直後──
「A」
名を呼ばれて、一瞬呼吸が止まる。
だが、以前のように身動きが出来なくなることはなかった。
「あら？動ける？」
驚いてグルッペンを振り返ると、ソファに座っていたはずの悪魔は立っていた。しかもすぐAの側に。
あまりにも近い距離に瞬間的に一歩下がりかけ、再びグルッペンの腕に拘束される。
「どこに行くつもりだ？」
「え、だって、トントンがいなくなったのならカップの片づけをしないと」
テーブルの上には飲まれなかったままの冷めたコーヒーが置かれたままだ。
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ヒイラギ - やばい､､､最初から最後まで一気に見てしまった､､､神作品すぎます！ (5月20日 21時) (
レス) @page25 id: 04238311ec (このIDを非表示/違反報告)
夢喰(プロフ) - めっちゃ好きです！更新頑張ってください！！ (2022年6月12日 11時) (レス) @page19 id: 5ee2b54502 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナツメ | 作成日時：2022年5月12日 17時
