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37時間目 ページ39

柚木先生side





ハスミと一度も会わないまま、

季だけが淡々と過ぎていって。

もう、長い袖でも身震いする程になった。



放課後、特にする事も無く

職員室で頬杖をついて茶色に染まった木々を見ていると

後ろの席から、数人の声が聞こえて耳を澄ます。



「最近、羽澄Aさんの成績ぐんぐん上がってますよね」


「前も充分だったけど、更に上にきたというか…」


「授業にも、いつも以上に真剣に取り組んでいますしね」



確かに、と心の中で共感する。

理科の小テストだって、

この前とは比べるまでもない位、点数が上がっていた。


解答用紙を見た時、
今度会ったら彼女の頭をくしゃくしゃにしながら褒めちぎろう
と思った事をよく覚えている。

その後に、
そう言えば最近、ハスミは俺の所に来なくなったのだと思ったことも。



"寂しい"

なんて言っちゃ駄目なんだろうけど

やっぱりハスミが居ないと物足りなくて。


でも、そんな感情

教師と生徒の間に持ってはいけない。


だから、落ちてしまった気分を変える為に立ち上がった。











理科準備室に行こうとして

何気無く通ったハスミの教室。


そこには机に向かうハスミが居て。


真剣にペンを動かす、その横顔が

何よりも、とても綺麗だった。


思わず見とれて、足を止める。


声を掛けようと口を開いたけど

この間の出来事を思い出して留まった。



「ねぇ、ここ教えて」



それでも動けずに、ただ見ていると

ハスミのよく通る声が響いた。

彼女の他に誰か居るのかと
少し首を伸ばして覗いてみる。



「いいよ。どこ?」



ハスミの前の席にカミヤが居た。

以前、俺が彼女に勉強を教えた様に

ハスミとカミヤの距離は近くて

二人はお互いの顔を見て笑っている。


そんな姿を見て、踵を返し早々とその場を去った。


黒い煙と火花が散った感覚が

どうしようもなく、俺を支配する。


それに顔を歪めた時、

ようやく、初めて気付いた。





これは嫉妬だ。






そして俺は





ハスミの事が好きだ、と。




多分、ずっと前。


彼女に話し掛けたあの日から、ずっと。

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透空(プロフ) - ミクさん» 本当ですか!?嬉しいです! (2020年7月15日 0時) (レス) id: 0ba7269771 (このIDを非表示/違反報告)
透空(プロフ) - 雪華さん» ありがとうございます!頑張ります!! (2020年7月15日 0時) (レス) id: 0ba7269771 (このIDを非表示/違反報告)
ミク(プロフ) - キュン死する (2020年5月23日 15時) (レス) id: 1e828f9e08 (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - 読んでてすっごいキュンキュンしました!更新頑張って下さい! (2020年4月28日 13時) (レス) id: c2d0832e50 (このIDを非表示/違反報告)
透空(プロフ) - カルリさん» ありがとうございますっ。もっと素敵になれるよう頑張ります!笑 (2020年4月2日 14時) (レス) id: eb1312b7ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:透空 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年2月23日 19時

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