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卅捌節 『170年前の』 ページ10

「今絵に映っているのは母です。
およそ170年程前でしょうか……。まだ妖が忌み嫌われていなかった頃です。半狐の母は神と崇められていました。この絵では、雨が降らず村人達が母に雨を降らせてくれと懇願(こんがん)しているようです。
妖狐は天を操る。雨を降らせるのも容易いこと。母や、その先代達がそのような願いを叶えているうちに、『願いを叶えたいなら、お狐様に願いなさい』そんな言い伝えが広まったようです」





「ちなみにこの御殿は今居る屋敷です」解説を加えながら、Aは絵巻をさらに伸ばしていく。
御殿が半分映り、絵が一度途切れた。少し離れたところに新たな絵が現れる。

今度は、御殿に一人の男が入っていく絵だった。みすぼらしい服で、くわを担いでいる。
「……私の父です。多分、道に迷って御殿に入っていくところですね。おっちょこちょいなんですよ……」唇の端を引きつらせながらAが言った。

何か父親の間抜けなところで困らされた過去があるのだろうか。彼女の顔は、父親にむける顔というよりも困った弟に向けるような顔だった。


それからは、Aの母と父親が両思いになったところ、Aが生まれたところ、家族三人で暮らしているところ、父親が寿命で亡くなったところ、Aと母親の二人暮らし……と絵が現れ、最後に現れた絵は、Aが崖に立っている場面だった。崖の先には空を飛ぶ母親が描かれていて、その先は紙が切れていた。





「この絵巻は、絵巻から半径10キロメートル以内の出来事を映します。……母は絵巻の妖力が及ばないほど遠くにいるんです」


「「…………」」





しんみりとした空気が流れる。なんとも言えない表情のジャーファルとヤムライハに気づき、Aは巻物を戻しながら焦ったように笑顔を浮かべた。





「い、いや……けどですね、妖力が及ばないところでも当主が死ねば絵巻は察知して、新しい当主の物語を描くんです。まだ母は映っています、つまり生きています。心配することなんてありません!」


「そ、そうなんですか……」





為政者という立場上、人付き合いに長けているジャーファルさえも微妙な反応しかできない。





「ま、まあいいじゃない、とにかく行きましょう、ね、ね!!」





帰ったら黒秤塔に新しい書物を贈与してあげよう。わざとらしくAを外に誘導するヤムライハに、ジャーファルは心の中で酷く感謝した。

卅玖節 『透明な結界』→←卅漆節 『大人気無い』



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表ヒナタ(プロフ) - ブラッキー×リーフィアさん» 別アカですみません、裏ヒナタです。コメントありがとうございました!面白いと言っていただけてなによりです(´∀`*)続き頑張って更新し続けますので、ゆったりお待ちください! (2014年10月30日 20時) (レス) id: f759972714 (このIDを非表示/違反報告)
ブラッキー×リーフィア - おもしろい!!(>∀<)/続きが気になります!! (2014年10月28日 19時) (レス) id: d1bbfb5376 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:裏ヒナタ x他1人 | 作者ホームページ:ホムペなんてないのだよ  
作成日時:2014年10月27日 15時

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