陸捨壱節 『騙す』 ページ36
勇気を奮い立たせて紡いだ言葉は、やはり弱々しくか細い。
女がたった一人で男の元へいくことの危険さぐらい承知している。天才魔導士だとて杖を奪われたらただの脆弱な女なのだ。腕を掴まれでもしたらひとたまりもない。そのことに恐怖を感じなかったわけではなかった。
ただジャーファルに迷惑をかけたくない一心で、ヤムライハは怯える自分を押し殺した。
返答を聞いた男はさらに笑みを深くすると、人差し指をたてて計画を詳しく説明した。
『23時に今立つ場所に集合、男と合流したら彼の屋敷へ直行。翌日の5時に解散』
「約束の時間に来なかったら……わかるよな?」
釘を刺した後、男は踵を返して去っていった。
男の後ろ姿が見えなくなった瞬間、どっと力が抜けてヤムライハは地面に手をつく。
これからの予定を考えると気が重い。何より自分がジャーファルを謀(たばか)れるかどうかが心配なのだ。
(ああ……そっか、私ジャーファルさんを騙すんだ)
改めて実感すると、それは到底不可能なことと思えた。悟いジャーファルを、お世辞でも演技派とはいえないヤムライハが、騙す。
申し訳ないという気持ちと見破られるのかという心配がさらにヤムライハの心に重くのしかかった。
もう聞き取りをする気力はない。
暗い気分のまま、ヤムライハはただ足を進めた。
☆
合流したヤムライハとジャーファルは、早速己が持っている情報を照らし合わせて、肩を落とした。結局、聞き取り調査で得られた情報は『彰霊は宮殿で働いている』だけだったのだ。
ただ、ジャーファルは宮殿の方角や、そもそも宮殿というものがどいういう施設かを調べてきていた。いくら『宮殿』に彰霊がいるということがわかっても、その宮殿がどこにあるのか分からなければ意味がないのだ。やはり自分は詰めが甘い、とヤムライハは自嘲する。
少し意見を交わしあって、A奪還作戦を決行するのは明日、今からは宿をとるということになった。ヤムライハが必死にジャーファルを説得したからである。
まあ説得というよりかは、今日行くか明日行くか迷っていたジャーファルに、ヤムライハが今日動くことのリスクと明日動くことのメリットをプレゼンした、といった方が正しいのだが。
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表ヒナタ(プロフ) - ブラッキー×リーフィアさん» 別アカですみません、裏ヒナタです。コメントありがとうございました!面白いと言っていただけてなによりです(´∀`*)続き頑張って更新し続けますので、ゆったりお待ちください! (2014年10月30日 20時) (レス) id: f759972714 (このIDを非表示/違反報告)
ブラッキー×リーフィア - おもしろい!!(>∀<)/続きが気になります!! (2014年10月28日 19時) (レス) id: d1bbfb5376 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:裏ヒナタ x他1人 | 作者ホームページ:ホムペなんてないのだよ
作成日時:2014年10月27日 15時