『Wing - 羽根の願い - 』 (ページ8)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:1,811 hit

eine Abstraktion 6 ページ8

ふわり。
誰かによって、私の身体は攫われ、地上へ還された。

「はああっ！」

脳が周囲の状況を把握するよりまず、背後から聞こえたのは、私以外の誰かの声。

麻里亜「＿＿！？」

何？何が起こってるの？
眼前には、先程自分が苦戦していた魔女を、容易に追い詰めていく少女。

「…………終わりよ。」

地を這う様な冷たい声と共に、少女の武器であろう槍が、魔女の頭部へと貫通した。

『＿＿＿＿ッ！！！！』

断末魔とも言えぬ叫びを上げ、魔女の姿は其の儘砕け散り、宙に溶けた。

少女が傍らに落ちていたグリーフシードを拾ったのが合図の様に、結界も消え、元の工場に戻った。

「危なかったわね。大丈夫？」

驚く事に、相手から話しかけられた。
普段から人見知りな私はコミュニティ能力が非常に低く、何を言っても会話なんて続きやしなかった。

麻里亜「………え、あ…大丈夫！助けて頂き、ありがとうございます！」

顏の前で手を振り、相手に深々と頭を下げれば「そんな針小棒大にしなくても」と笑った。

麻里亜「いえいえ、貴方は命の恩人です！何と御礼をすれば良いか…。」

「だからいいってそんな。あ、ほらこれ。」

眉を八の字にして苦笑する相手は、手にしていたものを私に差し出した。

麻里亜「ぐ、グリーフシード…。そんな…！受け取れません！私、何もしてないのに……。」

「いいって、いいって。」

麻里亜「で、でも…！」

「じゃあ次は、君が誰かに親切にしてあげてよ。恩人からのお願い。」

にこり。口許に三日月を浮かべるその相手は、悪戯げに笑った。

麻里亜「………はい！」

「えらい。いい子だ。」

暫くクスクスと笑っていた私と相手だが、暫くして相手が笑みを絶やし、言葉を漏らした。

「ねえ、君はこんな話聞いた事ある？」

「神浜市に行けば魔法少女は救われるって」

·